地方銀行に連携や再編の機運が高まっている。金融庁の畑中龍太郎長官(※)は1月15日に全国地方銀行協会、翌16日には第二地方銀行協会の会合に出席。居並ぶトップらに向かって「経営統合を経営課題として考えていただきたい」と表明。金融当局として業界再編の検討を求める異例の要請を行なったことが明らかになった。
地方銀行と金融庁は毎月意見交換会を開催しているが、年初の畑中長官の「爆弾発言」に、出席したトップは、いつにない緊張感に包まれたという。
複数の地銀関係者によれば、長官は「じり貧の経営から抜け出すために経営トップとして打つべき手を打て」と、ドスを利かせた声音で伝えたといい、思わず息を呑んだ頭取も少なくなかったといわれている。
国内市場は少子高齢化で縮小し、減少する貸出先の奪い合いは地銀の経営悪化に拍車をかけている。メガバンクのように、国内よりも利ざやが厚い海外を収益源にするノウハウもなく人材の乏しい現状がある。
畑中長官が地銀の再編論者であることは、地銀関係者にとっては周知の事実ではあるが、地方銀行が生き残りをかけるには「経営統合」しかないという長官の言葉には説得力がある。
金融庁の歴代長官は7人で、長官を3年務めたのは五味廣文氏(2004~07年)以来、畑中氏が2人目となる。続投した畑中長官は昨年9月に新しい検査・監督方針を出し、再編を念頭に「持続可能なビジネスモデルを取れているかをよく考えてほしいと地銀には折に触れて伝えている」(金融庁幹部)というが、今回の長官の「爆弾発言」は地銀トップを震撼させるものだった。
金融関係者は、「『経営統合』という言葉が長官の口から初めてはっきり飛び出たことだ。更に『今年は答えを出す年にしてほしい』とも述べており、それが金融再編を促す言葉であることは明らかだ。また10年後に市場が縮小する姿も示し、中長期の視点から危機感を持たせ、経営統合の決断を迫る意図からの発言だ」と語る。
人口減少にともない地方経済が縮小するなか、地域金融機関が生き残るのは容易なことではない。「市場規模に比して地域金融機関の数が多い、いわゆるオーバーバンキング状態にある地域があり、再編は不可避」というのが金融庁の認識である。畑中長官の「爆弾発言」によって今まで動きの鈍かった地方銀行は、いよいよ再編の動きを加速することになる。東日本大震災で今は手を付けることができない東北の地域金融機関(地方銀行・信用金庫)の再編を視野に入れての発言との見方もあり、まずは全国的に見ても地方銀行が18行と異常に多い九州地区がそのターゲットとなりそうだ。
※畑中龍太郎(はたなか りゅうたろう)
1953年生まれ。東京都立日比谷高等学校、東京大学法学部を経て、1976年大蔵省入省。
近畿財務局長、金融庁検査局長、同監督局長を経て2011年8月2日金融庁長官に就任。監督局長時代に東日本大震災後の金融システム維持や日本振興銀行に対するペイオフを初適用している。
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