とはいえ、2013年11月の段階で、サンディエゴの地裁判事は「こうした訴訟は政治的動機が背景にあり、いわば"陰謀論"的な内容すら含んでいる。しかも、原発事故と健康被害に関する因果関係が立証されていない」との理由ですべて却下したものである。
すると、ガーナー弁護士とその同僚たちは訴状内容から政治色を薄め、今年に入ると相次いで新たな訴訟を起こしたのである。
その結果、今年2月6日、サンディエゴの地裁において、東電に対する集団訴訟の新たな訴えが提出されることになった。今後、同地裁が本件を受理するかどうかが注目されている。
訴状によれば、事故が発生した当時、日本に駐留していた軍人およびその家族7万人のアメリカ人に対しても、潜在的な被害者であると捉え、集団訴訟に加わえる可能性に含みを持たせる内容となっている。実際、弁護団は集団訴訟の原告を1,400人にまで拡大すると意気込んでいるようだ。
一瞥して驚くべき内容であり、客観的かつ科学的な立証に欠けているにも関わらず、訴えた弁護士らがアメリカのみならず国際世論に対しても一方的な日本批判と東電責任論を繰り返したため、アメリカ議会のなかにも同調する動きが出てきた。
たとえば、バーモント州選出のサンダース上院議員らによる「トモダチ作戦従事者の健康追跡調査と救済法案」だ。内外のメディアの反応も日本には批判的な論調が目立つ。そうした影響もあってか、アメリカ世論も日本政府および東電に対する責任を追及すべきという動きを加速させかねない雲行きだ。今後の裁判の成り行きが大いに懸念されるところである。
注意すべき点は、こうした東電や日本政府を訴える動きを扇動している活動家たちのなかには、韓国政府とのつながりが深いと目される人物らが含まれていることでろう。要は、東電を訴え、多額の賠償金を勝ち取ろうとしているのみならず、日本企業や日本政府の国際的な信用を貶めることで、日米の信頼関係を離反させようとする意図も隠されているように思われる。
従軍慰安婦問題や日本の戦争責任を訴えるグループが日本の原発事故を利用し、一石二鳥を狙っているのではなかろうか――。
実際、この問題を通じて東電や日本政府の信用を失墜させようと国際的な世論工作を行なうため、韓国政府からはアメリカのロビイストに対して5億円の資金提供がなされているとのウワサがもっぱらである。こうした状況を放置しておけば、日米関係のみならず日本の国際的な信用度が毀損される可能性が極めて高いと言えるだろう。無視するにはあまりに深刻な問題と思われる。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
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