ゼオライト(株)
<コスト削減と健康改善、仕事の質も向上>
ゼオライト(株)の技術が大災害時に力を発揮する事例についてはすでに述べたが、平時でも同社の技術は大きな支持を得ている。代表例をいくつか挙げると、1つはコスト削減、もう1つは健康改善であると言える。
コスト削減は、同社の水処理プラントを利用することで、水道代の圧縮が可能になるというもの。とくに拠点となる福岡市は、2005年に5万m3/日という日本一の逆浸透膜の海水淡水化プラントを408億円投資してつくったことで、水道料金が政令指定都市のなかでも日本一高い都市となっている。そのため、同社の技術がとても重宝され、同社プラントを利用することで、年間数千万円のコスト削減につながるケースもある。
「弊社は過去30年間で、逆浸透膜の井水浄水装置を約600基導入しました。4万m3/日の水道水に代わる飲料水などを稼働させ、メンテナンスを行なっています。水道料金の削減額としては、平均的に100円m3/日の減額として、年間約15億円の節約に貢献したことになります」と勝美社長はコメント。
そのための設備投資費用は約120億円であるが、その費用は約8年で償却できるという。これにより、平均水道代の20%削減が可能となり、導入企業の経費削減に大きく貢献している。
次に健康改善であるが、これはプラントにより良質な水を得られることによるもの。同社の浄水器「あじさいの泉」では、セシウムやヨウ素、ダイオキシン類を除去できることが証明されている。今、日本における喫緊の課題とも言われている原子力・放射能問題への対策において、一筋の光明が差し込んでいる。同社はこれ以外にも、海水や工業用水を飲料水に浄化できる装置も持っており、一般家庭用から業務用まで幅広く商品を取り扱う。
安心で安全、良質な水を安定供給できることは、職場の士気の向上にもつながり、これが業務改善にもつながってくる。家庭においてもしかりである。「大手企業を含めた地元企業とのお取り引き、そして各家庭と、すべてのお客さまに対して、水を通じて喜びと感動を提供することが使命だと考えています」(勝美社長)と言うように、同社の技術が、企業および社会貢献につながっているのである。
これにより、同社は毎期増収基調を維持し、2013年7月期は売上高27億2,000万円、経常利益1億8,000万円余りを計上した。堅実経営により、着実に業容を拡大。社員一丸になって業績アップに取り組んでいる。
<3つの事業で良質な水を安定供給>
同社の事業を改めて説明すると、3つの柱からなっている。1つ目の「プラント事業」は、水質の改善を目的としたRO逆浸透膜による水処理技術を活かしたプラントを建設することだ。水質の悪化した水源を蘇らせることで、水質を最高品質にするほか、災害対策・ライフラインの確保につながると同時に、安心・安全な水の供給、並びに水道料金の経費削減を実現する事業だ。
2つ目は「メンテナンス事業」。同社で導入したプラントなどの装置の点検から薬品の補給までの水処理システム全般を、総合的にメンテナンスする事業だ。仮に他業者にて納入された装置でも点検等を実施し、ユーザーに対しての24時間365日安心して安全な水が利用できるインフラを支える事業だ。
そして3つ目は「浄水器・宅配水事業」で、安心で美味しい人気のROミネラルウォーターを自宅でつくれる浄水器「あじさいの泉」や、同水を自宅やオフィスに定期的に宅配する「わかみず」などを取り扱っている。
同社はこの3本柱を武器に、福岡県を拠点に、北九州、熊本、長崎、大分、岡山、大阪に営業所を有する。そして昨年8月、さらなる業容の強化拡大を図るため、東京営業所を支店に昇格させ、同社の技術職のトップで専務取締役の嶋村謙志氏が支店長に着任した。東京を支店に格上げしたのは、東京を中心とした関東エリアが福岡よりも数十倍の市場があることにほかならない。だが、同社が先駆けて導入していたRO逆浸透膜技術は同業他社でも導入され、主流でなくなりつつある。しかし、現状に甘んじることなく、"ピンチをチャンス"にできるような攻めの姿勢を感じることができる。
<COMPANY INFORMATION>
ゼオライト(株)
代表取締役会長:河村 恭輔
代表取締役社長:河村 勝美
所在地:福岡市博多区那珂5-1-11
東京支店:東京都荒川区町屋1-38-16
菱興町屋ビル
設 立:1970年8月
資本金:9,000万円
売上高:(13/7)27億2,000万円
URL:http://www.zeolite.co.jp
<プロフィール>
■河村 恭輔(かわむら・きょうすけ)
1934年8月、山口県出身。大島商船高等専門学校卒。工学博士。日刊工業新聞社主催の優秀経営者顕彰である「地域社会貢献賞」を受賞。趣味はゴルフと読書。
■河村 勝美(かわむら・かつみ)
1943年10月、広島県出身。広島県立瀬戸田高校卒。趣味は、生花、自然散策、絵画。
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