台湾で2月27日に封切り後、大ヒットしている映画「KANO」。日本植民地時代の台湾で、高校野球に打ち込み甲子園出場を果たした嘉義農林高校(略して嘉農=KANO)が舞台となっている。台湾人監督・馬志翔氏のもと、日本からは永瀬正敏氏、大沢たかお氏、台湾からは曹佑寧氏といった顔ぶれが出演している。
「日本人監督・近藤兵太郎氏のもと台湾人部員がチームワークを発揮し、甲子園で準優勝を収める」というストーリー。植民地時代は、甲子園大会にも「台湾代表」としての出場枠があった。背景が背景だけに、台湾国内では「植民地時代を美化している」という批判も少なくない。
映画「KANO」は今月の「大阪アジアン映画祭」で公開されたが、日本の映画館での上映は未定だ。かつて香港系の映画は「アクション」や「カンフー」が国境を越えて受け入れられたが、台湾でヒットした映画が日本でヒットしたケースは過去にほとんどない。「台湾人が面白いと思うこと」に日本人が共感するとは限らないのだ。三谷幸喜氏や宮藤官九郎氏が描く小ネタが時折「日本人にしか理解できない」と評されるのと同様、台湾映画には、台湾人にしかわからない「ツボ」が含まれていることがあり、日本人にはわからない感覚がある。
さらに、日本はNHKやテレビ朝日に代表されるように「スポーツ系ドキュメンタリー番組」の完成度が非常に高く、日本の視聴者は「スポーツもの」に対して目が肥えている。野球となると、野村克也氏らの緻密な分析的解説が浸透し、「一球一球の細やかな配球」まで目が向く。台湾映画「KANO」にも野球の部分が多く描かれているが、果たして、それらのシーンが日本人客を満足させるかどうかは疑問だ。ましてや、日本人客が映画館に金を払ってまで「野球モノ」を見に行くかどうか・・・。日台の行政関係者からは、日本での公開を待ち望む声が高いそうだが、「台湾人観客の感性は日本人とは違う」というのは業界関係者の定説で、失敗が許されない配給会社も「模様眺め」の状況と言う。
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