約5年前、福岡県と大分県の県境にある水郷・日田市を、大量の牛の糞尿が脅かした。現地の今をリポートする。
(有)本川牧場を訪れて後、同牧場が所有している天瀬塚田地区の土地を訪れた。花の遊園地、フラワーパークあまがせをぐるっと囲む形で本川牧場の看板が立てられたフェンスを発見。看板には「放牧中 立入禁止」と大きく書かれ、「場内での事故等の責任は一切負いません」と記されている。牛の姿は見えず、土地は野ざらしにされているという印象を受けた。どのような事故が起こるのか想像つかないが――。
その土地はとてつもなく広かった。取材日は小雨が降るとても寒い日であったが、同地からはもやが上がっていた。そのもやが何なのかはわからない。ちょうど砂蒸し温泉の蒸気のような感じで幻想的に地面から白い気体が上がっていた。この地に大量の牛の糞尿が廃棄された。ときおり、風に乗って鼻をつくアンモニアのようなにおいがするのはその名残か。
フェンスの先に足を踏み入れると、ズブズブと地面に飲み込まれていった。まるで泥沼のように土壌が柔らかく、敷地内を歩くことに危険を感じた。そこで、敷地に棒を突き刺し、どこまで刺さるか試した。すると豆腐に包丁を入れるかのごとく、何の抵抗もなく土は棒を受け入れた。どこまでも沈んでいく感じがして、慌てて手を引っ込めた。その様子は動画でご覧いただきたい。大量の糞尿を未処理のまま投棄したら、どんなことになるかは想像に難くないはずだ。
現在は、だいぶ時間が経ったためか、一見して牛の糞尿とはわからない。うっすらと草が生えている部分やむき出しの部分がある、言うなれば「空地」という感じである。大量の糞尿がそのままになっていることに不安を抱く声もある。風光明媚な水郷のまちにとって、望ましい状況ではないことは確実に言える。
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