ユニクロを展開するファーストリテイリング(柳井正社長)は、国内のユニクロ店舗で働く約3万人のパートやアルバイトのうち、その半分強の1万6,000人を地域限定で働く正社員に転換する方針を決めた。
ユニクロは2013年11月末現在、国内で直営を837店舗(大型店190、標準店647)、フランチャイズ店19店舗を出店。海外には米国やイギリスなど512店舗を展開している。
ファーストリテイリング(以下ファーストリテ)は、今後経済成長が続く中国やタイ・シンガポールなどの東南アジアを中心に事業を拡大する方針を打ち出しており、足元の国内店舗の基盤固めが急務となっていた。
ファーストリテの2013年8月期決算では、値引き商品の比率が増えたのが響き、国内事業は営業利益が5.4%減少。このため魅力的な店舗運営には優秀な人材の定着が欠かせないと判断し、雇用条件の改定に踏み切ることにしたのだという。
すでに今月から正社員化に向けた面談を開始しており、今後2~3年後を目処に移行していくという。ファーストリテは過去にも5,000人の正社員化を打ち出したことがあるが、正社員になるとフルタイムでの勤務となるため、子育てや介護などで短時間勤務しかできない人が多く、応募者は少なかった経緯があった。
今回は特定の店舗や地域での勤務に限定した「地域社員」として採用し、多様な働き方を認める方針であり、広報は「長く働いてもらうことで、地域に密着したより良い店づくりに貢献してほしい」と語る。
近年、人件費削減のためパートやアルバイトを採用する企業が増えていたが、最近小売りや飲食業を始めとして各業種で人材確保が課題になってきており、正社員化を進める企業が増えてきている。スターバックスが国内の契約社員800人を4月から正社員にすることを決めており、また全日空も客室乗務員6,000人のうち、その25%以上を占める1,600人の契約社員を今春から正社員雇用に切り替えることにしている。
今までパートなどの非正社員は半年や1年ごとに会社と雇用契約を結ぶため、雇い止めの不安にさらされることが多かったが、限定正社員は雇用が保証される利点がある。
だが、契約で定められた仕事内容や勤務地がなくなった場合、正社員は配転を選択できるものの、限定正社員は解雇されやすくなる。また雇用形態は正社員に変わっても賃金は非正社員とあまり変わらないまま、残業やノルマが増えるだけの「名ばかり正社員」になりかねないとの指摘も出ている。
安倍総理は「正社員」の普及をめざしており、同郷(山口県)の柳井社長が「限定正社員」の採用に踏み切ったことで、他の企業にも大きな影響を与えることになりそうだ。
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