NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、福島第一原発事故から3年を迎えたフクシマの放射能汚染の真実を伝える3月17日付の記事を紹介する。
昨年の9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスでIOC総会が開催された。この総会で2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった。このIOC総会に安倍晋三首相が出席してプレゼンを行った。
「フクシマ」について安倍晋三氏は、"The situation is under control."と述べた。「フクシマの状況は統御されている」。これが、安倍晋三氏が全世界に発したメッセージである。このメッセージを真に受けて、IOCは2020年オリンピック・パラリンピック開催地を東京に決めた。
上記の安倍晋三氏発言の前後を含めると次のようになる。「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。」
しかし、日本の国民のほぼ全員が、この安倍首相発言に違和感を持った。フクシマはコントロールされていない。
"The situation is out of control."
これが、すべての日本国民が知る「フクシマの真実」である。
この総会で同じくプレゼンを行ったJOC理事長の竹田恒和氏は、「東京は福島から250キロ離れていて安全だ」と述べた。この発言は、安倍氏発言とはニュアンスが異なる。
竹田氏の発言は、「フクシマは安全でないが、フクシマから250キロ離れている東京は安全だ」と発言したように受け取れるのだ。
安倍首相は、「フクシマは、東京にいかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはない」と述べたが、これも事実ではない。東京の多くの地域で放射線量が著しく高い「ホットスポット」が発見されている。神奈川や静岡で産出された茶葉からも、規制基準値以上の放射線量が観測された。どこが、「いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはない」ことになるのか。
メルマガの読者が、海外で制作された貴重な動画映像を紹介くださった。制作したのはZDFというドイツの公共放送局である。日本で取材を行い、43分のドキュメンタリー番組を制作した。その日本語字幕を付した動画映像がYOUTUBEに投稿されたというのだ。タイトルはずばり「フクシマの嘘」である。
日本の首相が、「フクシマの状況は統御されており、これまでも、そして、これからも、フクシマは東京にいかなる悪影響を及ぼしたことがなく、これからも、及ぼすことがない」と国際社会に断言したことに対して、これを真っ向から否定するドキュメンタリー映像が制作されたのだ。
ドイツの正統な公共放送局が制作したドキュメンタリーであり、恐らく、これから全世界の人々が、このドキュメンタリーを閲覧することになるだろう。安倍晋三氏に対して、IOC発言の疑惑が突きつけられるのは時間の問題である。
理化学研究所のプロジェクトチームはSTAP細胞作製の論文を発表して、一時的には賞賛を浴びた。しかし、時間が経過するなかで、論文の内容が精査され、賞賛は糾弾の嵐に変化しつつある。
安倍晋三氏のIOC総会での発言は、東京招致を決定する要因の一つになっただろうが、その発言内容が精査されてゆけば、やはり賞賛は糾弾の嵐に転じることになるのではないか。ZDFの制作したドキュメンタリー番組は、極めて正統な制作手法を貫いている。関係者への丹念な取材を基礎にして、事実を誇張することなく、正確に伝えている。
それだけに、極めて強い説得力を有している。世界中の人がこの番組を閲覧しているときに、日本人がこれを見ていずに、「フクシマは統御されている」と馬鹿の一つ覚えのように発言していたのでは、日本は世界から見放されることになるだろう。まずは、日本のすべての市民がこの番組を閲覧して、流布するべきだろう。
※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第816号「フクシマの放射能汚染はいまも深刻に拡散している」で。
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