西日本鉄道(株)(西鉄)
<バス事業の業績低迷、縮小へ>
西鉄グループは「運輸事業」「流通事業」「不動産事業」「レジャー・サービス事業」に大別できる。本業となる運輸事業の売上高は2013年3月期において840億円で、営業利益は45億円。12年3月期の売上高843億円から0.4%減少となった。西鉄といえば、福岡を中心とした乗合バスや、天神大牟田線・貝塚線などの鉄道があり、とくにバスは"市民の足"として地域サービスに貢献している運輸業のイメージが強い。
バス事業は、乗合バス事業と観光バス事業がある。バスに至ってはグループで2,873台のバスを保有しており、つい最近まで保有台数日本一を誇っていた。今でも各資料には世界一、日本一のバス保有企業として名を馳せる。さらに分類すると、乗合バス事業は地域の生活を支える足としての重要な役割を担う一般路線バスと、九州各県を中心に都市間をダイレクトに結ぶ高速バスに分類される。観光バス事業は、観光バス専業会社である西鉄観光バスが事業を手がける。
高い知名度を誇り、福岡地区を中心に網の目ように走る乗合バスは、13年3月期でのグループ全体輸送人員は2億6,684万人、実車走行は1万5,253kmに上る。だが近年、このバス事業においては、減少傾向に歯止めがかからないのが実情だ。なお、1年間での推移を見てみると、12年3月期時点での輸送人員は2億6,734万人だったことから、この1年間で実に差し引き約50万人分減少しているのがわかる。
反面、増加した要因としては、高速バス事業が好調で11万人増となったことがある。高速バスは九州の主要都市との間を結んでおり、さらには四国や東京・新宿まで足を伸ばす。価格面の安さも根強い人気を持つ要因だろう。また、ラグジュアリー面にも重点を置いており、車内に数席のプレミアムシートなどを設けるなど、車内でのサービス性も高い。
ほかに定期ではエコルカードなど多種のカードも販売しており、この輸送人員は144万人増となっている。しかし、トータルでの約50万人減は手痛い。このため、バス事業単体の業績も減少傾向にあり、13年3月期での売上高は485億円となった。
福岡市は人口150万人を突破し、元気がある都市だと言われているが、福岡市を取り囲む近隣の都市については、どちらかと言えば車社会であると言えよう。この近隣都市においては、福岡市内のように公共機関が充実しているわけでもない。そのため、自家用車を持つなどして一度車の利便性を味わってしまえば、なかなかバスや鉄道を利用しなくなってしまうのも現状である。
ほかに、少子化の影響も考えられる。まだ車を運転できない子どもはバスや鉄道を利用するのだが、すでに地方では軽自動車の販売躍進で一家に1台ではなく、1人に1台の時代と言われ、送り迎えなどには自家用車の利用が多くなったと言われる。そのような時代背景もあり、事業の縮小時期に入っている様相が見受けられることがある。
そのため、これまでは人間の血管のように細部まで地方を走っていた同グループのバス路線の廃止・統合も加速している。たとえば13年3月末に一般路線バス39 路線52 区間(計160.77 km)の不採算路線の廃止を行なっている。これまでも不採算路線の廃止は随時行なわれており、今後もその傾向は続くだろう。
最近、問題も起こった。グループ内の西鉄観光バスの男性運転手が、乗務前の飲酒を隠すため、呼気のアルコール検査を偽装したのだ。男性運転手は13年8月24日朝、乗務前の検査で、社内基準値を上回る呼気1リットル当たり0.109ミリグラムのアルコールが検出された。このため、細工したストローでもう1台のバスの運転手に呼気を吹き込ませて検査をパスし、熊本県菊池市から北九州市までバスを運転したというもの。
九州運輸局が、事件を起こした運転手が所属する同社北九州支社への特別監査を行なう一方、同社はバスを運行するグループの13社に対し、アルコール検査の再徹底を要請。全13社の運転手4,464人全員への個別面談を始めた。運転手7名が1年間で68回も不正を行なったこともわかっている。乗客の命を預かる事業がゆえに、信用回復に努めていただきたいものだ。
<COMPANY INFORMATION>
西日本鉄道(株)(西鉄)
代 表:倉富 純男
所在地:福岡市中央区天神1-11-17
設 立:1908年12月
資本金:261億5,729万円
売上高:(13/3連結)3,383億円
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