TPP(環太平洋経済連携協定)の妥結が進まないなか、日米間で綱引きが続いている。19日の参院予算委員会集中審議は、自民・民主などからTPPについて質問が相次いだ。
安倍晋三首相は、自民党の山田俊男議員の質問に対して「日米両国で協調して協議全体の議論を引っ張っていく」と答弁。4月のオバマ大統領来日を控え、日米間協議の進展を目指す考えを示した。一方、民主党の徳永エリ議員から「米国の要求をすべてのむことはないか」との質問が行なわれたが、安倍首相は「必要のない形で、身を削ってまでの早期妥結はまったく考えていない」と米国への譲歩は否定した。
しかし、日本側が米国に対してどこまで抵抗できるか懐疑的な声も少なくない。
18日、米・ワシントン市内で講演したフロマン通商代表は「農業分野でのアクセス拡大という点で我々の要求がまだ受け入れられていないために、交渉が合意に至っていない」などと日本側の譲歩を求める発言をしている。TPP交渉では、農産物以外の金融や医療サービス、知的財産権、公共事業といった非関税障壁の撤廃もテーマになっている。
日本経団連の米倉弘昌会長がニュージーランドのキー首相と会談し、「早期妥結に積極的な役割を果たしてほしい」と要請するなど、財界が外圧を利用してまでTPPに前のめりな動きをする一方で、安倍首相の出身である自民党内は、反対論が多い。
同党の議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」(森山裕会長)には、250名を超える議員が加盟している。「聖域なき関税撤廃は、党決議に反する」と慎重・反対論が圧倒的だ。加えて民主・共産など野党にも反対論が多い。
TPP問題に詳しい九州大学大学院准教授の施光恒氏は「私が懸念するのは、日本は、4月のオバマ訪日にアメリカのご機嫌をとりたがっていることです。ここで変な妥協が心配です。日本側が、4月のオバマ訪日のときに変な妥協さえしなければ、TPP交渉は長期化すると思われます。少なくとも、11月の中間選挙までは動かない可能性が高いのではないか。そこまでいけば、来年4月には統一地方選がありますので、日本側も、ますます安易に妥協できなくなると思います」との見方を示す。
TPPは、国益がかかる問題だけに、安易な交渉妥結は認められない。
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