九州旅客鉄道(株)(JR九州)
<今後の課題は、本業での黒字化>
しかしながら、地域活性化と鉄道事業を積極的に展開していながらも、経営的には十分安定しているとは言い難い。鉄道事業での黒字化は未達のままだ。やはり、九州全域で生活を守りながら鉄道事業を展開するのは相当に難しいのだろう。
たとえば、JR東海と比較してみることにする。決算期は同じ2013年3月期。鉄道事業では1兆1,691億円を売り上げ、鉄道事業のコストを差し引いた鉄道事業利益が3,958億円計上されている。
一方で、JR九州は鉄道事業での売上高は1,610億円。営業費用が1,727億円。マイナス117億円である(ただし、本業以外での収益や経営安定基金の運用益などで、経常利益は黒字75億円。純利益は20億円の黒字)。
スケール感の違いもさることながら、本業で利益を上げているか否かが明暗を分けている。というのが、鉄道事業は急激に伸びたり、急激にしぼんだりするものではない。基本は通勤通学、病院通い、ショッピングなどの基礎があって成り立っている。それゆえに、今期黒字が出れば来期も、と継続性が見込める。
ただ、都市構造の変化など大きな流れはあるため、30年後は変化するかもしれないが、急激に変わる性質のものではない。大きな投資、たとえば新たな路線を敷設するなどしたら、収益が変化することもあるだろうが、基本的に、従来通りのことをしていたら、従来通りの利益が見込める事業と言える。
つまり、いかに早く収益性を高め、本業での営業利益を生むかが鉄道経営において重要なポイントになると思われるのである。たとえば、今回の「ななつ星in九州」や、九州新幹線なども赤字を圧縮してくれる存在になり、いずれは本業黒字化の柱に成長するかもしれない。工夫を重ねてきているがゆえに、その蓄積されたノウハウもJR他社と比べても負けてはいないだろう。
鉄道事業者としての本業で利益を生む体質が築かれたならば、その企画力をもって、地域の活性化をより力強く推進することができるようになるのではなかろうか。アイディア、実行力を完全に活かすことができるような、収益構造の構築が望まれる。そして、それが実現できた暁には、九州活性化のためのキー企業としての地位を確固たるものにすることだろう。
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<COMPANY INFORMATION>
九州旅客鉄道(株)(JR九州)
代 表:唐池 恒二
所在地:福岡市博多区博多駅前3-25-21
設 立:1987年4月
資本金:160億円
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