NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、「人事」「外交」「経済」の各面で鮮明になりつつある安倍政権の凋落加速について述べた3月20日付の記事を紹介する。また、未公開部分では、消費税の大増税により日本経済が転落することも示唆されている。
安倍政権の凋落が一段と色濃くなり始めた。
国会論戦を見るとその傾向が鮮明に浮かび上がる。大人(たいじん)の風格がまったく存在しない。批判されるとき、その批判者の言葉の中から得るものを吸収し、それを糧にさらに大きくなるという手がある。
ところが、批判があると、パブロフの犬のように、直ちに逆上して、反論のための反論を展開するのでは、何の吸収もない。ひとつひとつの批判に対して、いきり立つ安倍首相の姿を見ると、安倍晋三氏に余裕がまったくなくなっていることが分かる。
2016年まで衆院解散を行わない限り、安倍政権は安泰の土俵の上にあるが、これが安倍政権の安泰を保証するものではない。自ら腰砕けという可能性は存在するのだ。
安倍政権の凋落は、1「人事」、2「外交」、3「経済」の各面で鮮明になり始めている。
人事における失敗の最大原因は、「私」を「公」に優先させている点にある。これを世では「おともだち人事」と呼ぶ。安倍政権の凋落をもたらしているのは、「おともだち」である。「おともだち人事」の第一はNHK会長に籾井勝人氏を起用した。裏で糸を引いたのはJR東海の葛西敬之氏である。
安倍晋三氏は財界応援団「四季の会」を過度に偏重している。第一次安倍政権で安倍氏がNHK経営委員長に起用したのが富士フィルムの古森重隆氏。安倍政権応援団長を自認しているのがJR東海の葛西敬之氏。古森氏も葛西氏も「四季の会」主要メンバーである。安倍氏、葛西氏、古森氏、そして、麻生太郎氏などが談合して、籾井勝人氏をNHK会長に起用したと見られている。同じくNHK経営委員に起用されたJTの本田勝彦氏も「四季の会」メンバーで安倍晋三氏の家庭教師を務めていた。
NHK経営委員はNHKの最高意思決定機関の委員であり、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」でなければならないが、安倍晋三氏は、この人事を完全に私物化している。安倍氏が経営委員に起用した百田尚樹氏や長谷川千代子氏が問題発言を繰り返しているのも、安倍氏の人事方針に原因がある。
籾井勝人氏は記者会見で従軍慰安婦について、「このへんの問題はどこにもあった」「なぜオランダに今ごろまだ飾り窓があるんですか」と述べた。日本軍は戦時中にオランダ人女性を強制連行して従軍慰安婦にしていたことで、戦後の国際軍事裁判で有罪が宣告されている。籾井氏は安倍晋三氏がオランダのハーグで開かれる核・セキュリティサミットに出席することを知ったうえで、あえてこの発言を行ったのであろうか。
百田氏は東京裁判を否定し、米軍による大虐殺を糾弾し、南京大虐殺は米国が自国の罪を隠蔽するために捏造したものであると主張している。また、安倍氏が首相補佐官に起用した衛藤晟一議員は、安倍氏の靖国参拝に対する米国政府の「失望」メッセージに対して、「失望しているのは日本だ」と公言した。さらに、自民党総裁特別補佐の萩生田光一氏は、米国の「失望」メッセージについて、「共和党政権の時代にこんな揚げ足をとったことはない。民主党政権だから言っている」と米国を批判した。
これらがすべて、日米関係を史上最悪の状況に導く原因になっている。
安倍氏は日中関係、日韓関係を著しく悪化させているが、米国から命令されて、ハーグで米日韓首脳会談を開催するために、「河野談話を見直さない」ことを明言させられた。また、ハーグでの会合でオバマ大統領は中国を最重要視しており、日本の安倍晋三氏は完全な脇役に追いやられる。ロシアは会議に欠席で、安倍氏は米欧の対ロ制裁に同調せざるを得ないため、まさに「コウモリ」状態に陥っているのである。
そこに、追い打ちをかけるのが日本経済の大波乱である。
※続きは20日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第817号「消費税大増税と共に日本経済は転落する」で。
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