2000年の設立以来、危険現場作業ロボットや歯科患者ロボットなどを商品化してきた(株)テムザック(本社:福岡県宗像市、高本陽一代表)は、24日、泉ガーデンタワー(東京都港区)で記者会見し、せき髄損傷の患者が装着型歩行支援ロボット「アクティブ・ギア」で歩行するデモンストレーションを日本で初めて公開した。
歩行の様子を披露した舒天縱さんは、かつてモーターサイクルの愛好者だった。交通事故に遭って重度のせき損を負い、医者からは「一生立ち上がれない」と告知されていた。普段は車いすで生活しているが、この歩行支援ロボットと出会い、臨床のプロジェクトに参加するようになった。
「このプロジェクトに参加することで、自分にもう一度立ち上がれるチャンスをいただき感謝しています。より自分の頭で思い描いたとおりに歩行を支援してくれる、そんなロボットになるとうれしいですね」(舒さん)。
舒さんの感覚では、従来のリハビリでは腕の力を8割出さなければ一歩も歩けなかったが、「アクティブ・ギア」を装着すれば3割の力で歩くことができるという。
また、このロボットの特徴は、筋肉を動かすときに生じる電圧を認識する「筋電位」の技術に依らず、両手のスティックにあるコントロールクラッチを動作司令にしたこと。これにより、肌に貼る電圧感知のシールなどが不要となり、脱着が簡易になることで患者の負担を大きく軽減できるという。
「せき髄損傷で歩行困難になった人たちに、夢の一歩を提供したい」。そんな思いから、台湾の工業技術研究院(ITRI)が開発したのが、この製品だ。それをテムザックが商品化して日本国内で販売すべく、ITRIとの技術・製造提携の調印式が行なわれた。
「今回はITRIさんと提携することになり、テムザック技術研究所を中心に、鳥取県や米子市、そして鳥取大学さんや早稲田大学さん、(株)アダチさんの力をお借りして、『アクティブ・ギア』を日本国内で商品化すべく準備を進めています」(テムザック・高本社長)。
テムザックは鳥取大学医学部附属病院との共同研究をきっかけに医療ロボットの共同研究を本格化させるため、昨年12月、米子市にトップクラスの研究員を集めて(株)テムザック技術研究所(代表:檜山康明)という子会社を設立している。
ITRI技術ディレクターの胡竹生氏によれば、「テムザックさんはリハビリ用ロボットの製造と拡大に豊富な経験があるため、同社との連携によって『アクティブ・ギア』の実用化が加速されるのを期待しています」という。
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