今日3月25日で、福岡市議会の3月定例議会は閉会する。本来なら、3月議会では、与党会派は、市長選に向けて花を持たせる質問を行なうのが、これまでの慣例であった。ところが、市議会において与党会派から高島市長に苦言を呈する質問が相次いだ。
<与党会派から上がった批判>
青少年科学館が九州大学六本松キャンパス跡地に建設が予定されているが、その賃料の高さが与党会派所属議員から明らかにされ、各会派の間で話題になっている。
質問は、3月19日の条例予算特別委員会の総会質疑において、みらい福岡の平畑雅博市議が行なったもの。平畑市議は、「30年間でJR九州に約100億円を支払う」ことを指摘。「JR九州による一体整備ではなく、PPPかPFIによる福岡市単独事業で行なうべきでは」と質問している。
これに対する高島市長の答弁は「次代を担う子供たちが健やかに生まれいきいき育つために青少年科学館を子どもの育ち、学びの場、支援活動の場を提供する」とした上で、「子どもから大人まで誰もが利用しやすいユニバーサルデザインに配慮した施設づくりができること。さらにまちづくりの視点からも地域住民の意見を踏まえたまちづくりガイドラインに沿った賑わいや憩いのある空間づくりを実現できることから、一体整備の手法が最適と考えており、実現に向けて取り組んでまいります」との答弁を行ない、一体整備が望ましいとの考えを示していた。
<30年で100億円の高賃料>
九州大学六本松キャンパス跡地は、約6.5ha。北側を複合商業施設と福岡市青少年科学館、南側は、裁判所や弁護士会館など法曹施設が入居する。北側の約2.1haは、土地を所有するUR都市整備機構が、事業者を公募。実施した入札でJR九州が落札した。
平畑市議が問題にしたのは、福岡市がJR九州に支払う賃料の高さである。
福岡市は、JR九州による一体整備であれば、土地取得費21億円が初期投資として必要なく、市債発行も必要ないというメリットを強調する。しかし、市子ども未来局によると、JR九州に福岡市が支払う年間の賃料は、共益費を含めて3億3,180万円を見込んでいる。30年間で約100億になる計算だ。
福岡市は、昨年6月市議会において、一体型の賃借開発か、土地を取得しての単独開発かについて賃借開発が最適との報告をしている。同年9月議会第2委員会において、同市議は、賃借か市単独開発がよいかは、議会に判断を求めるべきとの要望を行なった。それに対して市側は「26年6月議会において最終的な判断を得たい」との答弁をしており、最終的判断までの時間は残されている。
質問において、平畑市議は市長に異例の苦言も呈した。
「市長。申し訳ないけどね、行政の方とばかり話をしていると、質問する僕でさえ言いくるめられそうになるわけよ。地域に行なって住民の話を聞いてください。普通の感覚なら単独整備になります。30年たっても財産にならないなんてありえないよ。まだ時間あります。慎重に検討していただきたい」
NET-IBの取材に対し、平畑市議は「財政局も子ども未来局も、行政とだけ話をしているとうまい論理を展開してくる。30年で100億円はあまりに高い。メンテナンス費用もかかります。PFIを活用しての市単独整備であれば、負担は軽減できます。しかし、30年後は今いる職員も僕たち議員もいません。誰も責任を取りません。それを平気でやるというのが信じられません。高島市長は、役人から都合のいいことしか知らされていないと思います。たとえ1年遅れても次代を担う子どもたちのことを考えたものにすべきです」とコメントしている。
前述のように高島市長は、青少年科学館整備事業について「次代を担う子供たちが健やかに生まれ、いきいき育つために青少年科学館を子どもの育ち、学びの場、支援活動の場を提供する」としているが、このままでは、将来の子どもたちがそのつけを支払うことになる。
市長を支える与党会派からも、苦言を呈される高島市長。再選に向けたシナリオが狂い始めた。
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