「私は、高島市長は嫌いです」――。そう断言するのは、ある保守系議員。この市議は「議会に諮るべき案件を、諮ることなく専決で決めてしまう。議会無視がひどい」と語気を強めて語った。中央保育園問題や自身の水着姿のフェイスブックへの投稿、相次ぐ職員不祥事など、内憂を抱えている高島市長。福岡市議会を取材して回ると、野党会派を中心に高島市長への評価はかなり厳しい。高島市長の1期目も終盤が近づいてきたが、来年度の予算審議を行なうこの時期、二元代表である議会との関係は、高島市長にとって重要である。だが、この局面において、議会内で市長の資質が疑われる状況にある。
<市長批判で気勢を上げる共産党>
一番、高島市政に否定的なのは、日本共産党市議団だろう。3月1日に福岡市天神の商業ビル内にある会議室で、同市議団による市政懇談会が開催された。あいにくの雨模様のなか、会場には50名ほどの支持者が集まっていた。議会報告を行なったのは、南区選出の宮本秀国市議。「安倍政権の暴走政治と一緒になって、市民に悪政を押し付ける高島市政」と強調。報告のなかでは、高島市政の下で行なわれた行財政改革の批判から、中央保育園移転問題に至るまで、あらゆる分野からの市政批判が行なわれた。
記者が注目したのは、党の方針に基づいて戦略的に保守層を巻き込む発言がなされたことだ。懇談会において支持者から「部落解放同盟に補助金が出ているのはおかしい」との声が上がった。答弁に立った熊谷敦子市議が「我が党に同調して、保守系会派の議員からも批判が行なわれたが、行政からそういう質問はしない方がよいとお叱りがあった」と明らかにするや、どよめきが起こった。左派の立場にある共産党が、ときに保守層とも連携する柔軟性を見せるのはなぜか。
共産党は、今年度の党大会で「一点共闘」を掲げている。「これまでにない広範な人々が立ち上がり、この共同の輪のなかで日本共産党が重要な役割を果たすという、画期的動きが生まれている」と大会決議で自己評価をしている。これは国政ばかりではなく、地方においても同様の認識だ。その意味で焦点となっている中央保育園問題は、彼らにとって「一点共闘」なのだ。同党の動きは今後も見逃せないだろう。
<中国公務員受け入れで保守系の支持を失う>
一方、最大与党である自民党やそのほかの保守系会派の動向はどうなのか。自民党市議の多くは市長への評価、その是非を語ることについては慎重だ。高島市長誕生を振り返ると、当初は故・石村一明市議や津田隆士市議を中心とした市議団の「支持」だったのが、告示後から急激に自民党色が強くなっていった。高島氏の応援に、谷垣禎一自民党総裁や小池百合子総務会長など、当時の自民党幹部が勢ぞろいした。選対本部長の太田誠一元衆議院議員は、演説で「政党色が出ないようにやってきたが、現職が明確に民主党色を打ち出してきた」ことへの対抗だと説明していたが、事実上の自民党公認候補扱いであった。
ところが実際に市長に就任すると、冒頭の市議の発言にあるように、議会に諮らず唐突に発表されることに困惑や批判の声が高まっていった。
その最たる例が、中国公務員研修受け入れだろう。市が中国に対し、中国公務員研修受け入れについて積極的な姿勢を示した2012年1月から約半年、福岡市議会への報告・相談はなく、市民への公表も行なわれていない。このことが明るみに出るや、「NET-IB NEWS」や産経新聞で大きく報じられ、保守層が反発。
福岡市には、全国から抗議の電話やメールが殺到した。地元保守系グループが同年8月「福岡市長 高島宗一郎くん、いい加減 国を売るのはおやめなさい」との見出しで、中国公務員研修受け入れ反対の意見広告を産経新聞に掲載。連日、市役所に右翼団体による街頭宣伝活動が詰めかける事態になったことは、記憶に新しい。
議会で同問題を追及した福岡維新・無所属の会代表の富永周行市議は、「安全保障にもかかわる問題を、議会にも諮らず、いきなり決めてくるのは、やはりおかしい」と批判。高島市長は「アジアのリーダーという言葉をはき違えている」としたうえで「阿部市長、進藤市長のときは、付いていきたいという人が多かった。高島市長はそうではないと職員も言います。やはり軽すぎます」と、市長としての資質自体に疑問を投げかける。
| (後) ≫
※記事へのご意見はこちら