九州国立博物館で今秋開催予定の「台北国立故宮博物院展」だが、「国立」という部分に中国サイドからケチがつく可能性が出てきた。
以前、日本は国交がある「中国」の目を気にし、国交がない台湾との関係を蔑ろにしてきた。成田空港が開設した際、各航空会社は新設の成田に移ったが、中国側が嫌がったため、台湾系航空会社・中華航空は羽田に取り残されたこともあった。かつて、「NHK中国語講座」で「台湾」「台湾文化」が扱われることはなかった。扱うことで問題が出てくるのを制作サイドが嫌ったためだと言われている。
しかし、この2~3年で日中関係が急激に悪化。間隙を縫って、「台湾」が日本へ台頭してきた。日中橋梁イベントが続々と中止となる一方、「台湾」関係のイベントは増加。台湾としては「親日」を謳いつつ「台湾」の国際的な地位を上げていくことも一つの思惑。NHK中国語講座では台湾がロケ地となり、台湾観光局が制作したCMも日本の民放局で放送されるなど、日本における「台湾」の地位は確立、この勢いでどさくさに紛れて「台湾は国」というところまで既成事実化させる流れができてきたのだ。
「国立故宮博物院展」の「国立」とは「中華民国」を指す。しかし、中国(中華人民共和国)は、台湾を「一地域」としており、「中華民国」の存在を認めていない。「国(中華民国)立故宮博物院」とは、台湾内での名称だ。九州国立博物館としても、今年一番の目玉イベント「故宮博物院展」は何とか成功させたい。本来は門外不出の「肉形石」や「翠玉白菜」といった清時代の目玉作品の誘致も成功。そして、告知チラシも無事にすり終わった段階だ。
しかし、日台の友好関係とは裏腹に、中台の緊密度も急激に増している。中国サイドが「国立」と名付けられている展示会に難色を示し、名前に対して「待った!」をかける可能性も出てきた。その際、現国民党政権では台湾が中国側に反発するとも思えず、「国立」という単語は取り除かれる流れもある。故宮博物院展の開催については、まとまるまでに台湾のトップ・馬英九総統までが関わった。展示会のタイトルを決める際、中国の存在を考慮し「国立」を入れるかどうか、日本サイドで議論されたという話もあるが、「快く出してもらいたい」という部分から、台湾側に敬意を表して「国立」の文字を入れた。しかし、数カ月でさらに状況は変わり、台湾は「中国」の顔色を見るようになってきたのだ。
在日の中国人行政関係者は「『国』という単語を公式イベントで使おうとしているのは遺憾だ。しかし、変更を求めるかどうかは現時点で何とも言えない」と話す。果たして名前の変更はあるのか・・・今後の「中国」の動向に目が離せない。
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