みんなの党の渡辺喜美代表が、化粧品・健康食品販売会社の(株)ディーエイチシー(以下DHC)会長の吉田嘉明氏から計8億円を借り入れていたことが、「週刊新潮」(4月3日号)で報じられた。健康食品・化粧品業界による政治家への資金提供問題は、過去に何度も話題となったが、規制緩和につながる動きはみられなかった。今回は業界の超大物による、しかも破格の資金提供だったが、それでも政治家からの「返答」はなかったようだ。
記事は、吉田会長の手記というかたちで掲載。それによると、渡辺代表がみんなの党を結党する前の2009年2月に知人の紹介で知り合い、新党設立のための資金として土地の購入を依頼された。その土地を1億8,458万円で購入したのが始まりで、その後も10年7月の参院選時に3億円、12年12月の衆院選でも5億円を渡辺代表に提供したという。その後、渡辺代表への不信感を募らせ、告発に至ったとしている。
記事のなかで、吉田会長は行政改革に力を入れていた渡辺代表に、「官僚機構の打破などを期待していた」としているが、これまでにも健康食品・化粧品販売会社が、業界の要望実現を目的に政治家へ資金協力してきた経緯がある。その多くは、海外のマルチ・レベル・マーケティング(MLM)企業が占める。特定商取引法による販売規制の緩和や、MLMという販売業態の社会的地位向上を目的に、いくつもの企業が政治家に資金面で協力してきた。
05年に元衆議院議員の前田雄吉氏が、MLM企業数社と団体から講演料やパーティー券購入代金などを受け取っていたことが発覚。また、衆議院議員の野田聖子氏が日本アムウェイ合同会社にパーティー券を購入させていたことも報じられた。11年には、元衆議院議員の山岡賢次氏が、複数のMLM企業から政治献金を受領していたことが明らかになった。このような政治家を頼る動きがあったものの、過去15年間の4度にわたる改正で、特商法は規制強化される一方だった。
渡辺喜美事務所によると、今回の件で渡辺代表は「個人として借りたもの」と主張。「みんなの党の国会運営について吉田会長より何度もメールをいただいておりましたが、我が党の方針とは相容れず、お断り申し上げました。私の政治理念に反することは、たとえお金を融通していただいた方でも承服はできませんでした」としている。真相はやぶの中だが、過去に政治家に協力してきた健康食品・化粧品企業と同様、業界の超大物の声も政治家の耳に届かなかったようだ。
吉田会長率いるDHCは、売上高が1,000億円を超え、化粧品・健康食品通販業界ではトップクラス。吉田会長は一般紙や業界紙を含め、メディアに滅多に出ないことで知られている。そういう意味で、返済も滞り、自身との「公約」まで反故にした渡辺氏によほど腹を立てたのだろう。渡辺代表は今回の件で、公職選挙法違反や政治資金規正法違反などの疑いが指摘されており、今後大きな代償を負うかもしれない。
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