「私は、高島市長は嫌いです」――。そう断言するのは、ある保守系議員。この市議は「議会に諮るべき案件を、諮ることなく専決で決めてしまう。議会無視がひどい」と語気を強めて語った。中央保育園問題や自身の水着姿のフェイスブックへの投稿、相次ぐ職員不祥事など、内憂を抱えている高島市長。福岡市議会を取材して回ると、野党会派を中心に高島市長への評価はかなり厳しい。高島市長の1期目も終盤が近づいてきたが、来年度の予算審議を行なうこの時期、二元代表である議会との関係は、高島市長にとって重要である。だがこの局面において、議会内で市長の資質が疑われる状況にある。
<少数会派を無視する市政運営への批判>
自民党・公明党とともに与党会派を構成する保守系会派「みらい福岡」は、自・公両党とは微妙にスタンスが異なるようだ。代表の笠康雄市議は、「会派として個々の議員にあまり拘束をかけることはありません。それは、政策の方向性を同じくする個々の集合体であるから」と会派の立場を明言。「3月議会が終わるまでは、会議の議題として市長選挙を挙げることはしない」とし、「行財政改革について、高島市長がどれほど理解を示し、具体的に政策として実行してこられたかという点が、最大の判断基準になる」と政策に対する是非で考えるとしている。
高島市長が与党会派に配慮する一方で、少数会派は無視されていると批判しているのが、「社民・市政クラブ」の高田保男市議だ。高田氏は、部落解放同盟福岡市協議会委員長も務めており、その立場から高齢者や少数者への配慮が足りないと指摘する。観光による景気浮揚と企業誘致を推進する高島市長に対して、「はっきり申し上げてパフォーマンスだ」と断定。「予算削減ばかりでは、市民の不平不満が高まると思います」と懸念する。国政では風前の灯の社民党だが、地方においては、旧社会党からの流れで自治労などとの関係も残っており、その影響力は無視できない。
前回、吉田前市長を応援した民主党会派「民主・市民クラブ」の動向が注目されるが、開会中の市議会において13年度2月補正予算の中央保育園移転の工事費追加補助に反対するなど、高島市政とは対決姿勢をとる。
「高島市長を交代させるべき」と強く語ったのは、民主・市民クラブの調崇史市議。同氏は、元民放記者の経験があり、民放アナウンサー出身の高島市長が、パフォーマンスを駆使した行政運営を行なうことに疑問を投げかける。
<国旗掲揚をも利用する高島市長>
福岡市が抱える問題は、就労問題や単身高齢者の孤立死、増える生活保護費、地域の教育力の衰退など、表面に見えにくいが深刻なものが多い。ところが、各会派の市議が口をそろえるように、きめの細やかな政策よりも派手で目立つもの、かつ与党会派・自民党とその支持層の歓心を得る政策が優先されている。そして何より言動が軽い。
本誌3月6日号でも言及したが、福岡市は、政府が特定分野の規制緩和を進める「バーチャル特区」の指定を受ける見通しとの報道されている。起業特区と報じられているが、実態は問題化した「解雇特区」と変わらない。この間、高島市長は、自民党本部でプレゼンテーションを行ない、首相官邸を訪れ菅義偉官房長官に会うなど、売り込みに熱心であった。
3月5日の市議会本会議で、自民党の冨永計久市議から、公立学校における国旗の常時掲揚を求める質問が行なわれた。高島市長は「学校で国旗を常時掲揚することにより、子どもたちが日頃から慣れ親しみ、我が国だけでなく他国も尊重する態度を身につけることはとても意義がある。教育委員会の取り組みを一層支援していく」との答弁を行ない、翌日の産経新聞で大きく報じられた。
日本人として国を愛し、我が国の公立学校において国旗を掲揚することは当然のことだが、福岡市は日教組など反対する勢力も強く、冨永市議も再三議会で質したが何十年と正常化できなかった。穿った見方かもしれないが、昨年末の特定秘密保護法の強行採決で支持率が下がった安倍首相の靖国神社参拝と同じで、市長選を控え、中国公務員の受け入れ問題で失墜した保守層からの信用回復を目論んだのではないか。
与野党問わず、市議会議員の高島市長を見る視線は厳しい。果たして、高島市長はいよいよ11月に迫った市長選を乗り切れるだろうか。
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