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「未来」を育む共栄船渠(後) 
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2014年3月28日 07:00

 過去、造船業界も技能継承問題も見過ごしてきたわけではない。造船業は90年代後半から現場での専門的な技能を受け継ぐものがいないことが問題視されていた。その頃から職人が高齢化していたにも関わらず、不況による採用控えなどによって現在の中間層にあたる職人が不足し、後の海事業界の発展が危ぶまれていたのだ。

<業界内でも努力はしたものの>
 船舶に必須の特殊技能の継承には時間が掛かることから、業界団体などでも対策が練られてきた。技術を学ぶDVD教材の作成、作業の理論的解明と文書化、人材育成事業の立ち上げ。この一環で各地に造船技能開発センターが設置された。共栄船渠がある大分県佐伯市にも、2006年に「大分地域造船技術センター」ができている。

2つのプロペラ部分を持つ船 山本社長は、「企業でも作業の機械化を目指しているところがありますが、難しいですね。同じ形の船なら良いのですが、形が変わると使えなくなります。船の型に合わせて機械を作るのは難しく、最終的にはやはり手作業に頼ることになります。職人の数は、各造船所に多くて3、4人でしょうか。そのなかで匠と呼ばれるのは、全国でほんの数人です」と語る。さらに「造船業は特殊ですから、建設業など陸での溶接経験がそのまま使えるものではありません。しかも、技術の修得には30年は掛かります。20代で修行を始めても、ものになるのは50代から。そして今、技術指導できる職人は高齢になっています。弟子の育成が急務なのです」と、職人不足の深刻さを語る。

<未来に向けて新しい船を造ることが急務>
 同社の業務は幾度もの荒波を乗り越えてきた船舶全体を造り立ての船のように甦らせることにある。秀逸な人材育成には自信がある。船体を解体し、部品を分解し、ひとつひとつ丁寧に手作業で修理する。今、共栄船渠でメンテナンスを受けている船舶は貨物船で、小さいが馬力がある。180度回転するプロペラがついているので、小回りも効く。海上で真横に動くことも可能だ。その船のエンジンを、補修している。エンジンは船の心臓部だ。100%修繕できて当たり前。失敗は許されない。しかし山本社長は、「人と同じで船もいい先生にエンジンを診てもらうと、いつまでも若いものです」と、作業中の部品を指差す。磨き上げられた部品は美しい。洗浄前と洗浄後の部品を比べてみると、その違いは明らかだ。

メンテナンス前のプロペラメンテナンス後のプロペラ

 こうやって、一度造られた船は定期的にメンテナンスを行なうことで、永く使われる。しかし船の寿命はいつか終わる。今でさえ内航船が足りないのだから、今のうちに新しい船を造る準備を整えておかないと内航業界が費えてしまう。造船には資金と時間が掛かる。造船資金調達をしても、でき上がるまでに2、3年掛かる。しかも造船費は10億円単位だ。家族経営が主の船主が担うには、負担が大きすぎる。

 もちろん、造船費用は船主だけが担うものではない。内航海運業者は、オペレーター(内航運送業者)と、荷主がいて、造船の折にはこの2業者が船主(内航船舶貸渡業者)とともに三者で契約を結ぶ。この契約書をもとに船主が銀行から資金を借り入れるのだが、長期の借り入れになるので返済期間中に契約内容が景気に見合わなくなることもある。このとき1番負担がかかってしまうのは、もともと資金を持たない船主たちなのだ。

 彼らも無防備に造船業に参入するわけではない。自身の保障として、担保に入れられる山や土地でも持っていないと造船業には乗り出せない。しかしそれにも限界がある。もともとの金額が大きいだけに、不況のあおりも大きい。「自分が背負った重責と苦労を、子どもには味合わせたくない」と言って、船主たちは自分が築いた企業を一代限りで畳む。「これでは若手が育つはずはありません」と山本社長。まだまだ解決すべき問題は積散しているが、業界内部でそれらの問題を声高に叫ぶ者がいないということ自体が問題だ。

<もっと内航業界の情報を顕にしたい>
 内航事業など、海事事業の事情は、陸運などと違って情報が少なく一般には見えにくい。問題は内向化し、当事者たちは状況を客観的に見ることがない。「日本の物流業界を支え、これからも支えていかねばならないのに、あまりにも閉鎖的です。もっと情報を顕にするべきなのでしょう。そうでないと船や造船職人がいなくなり、好景気になったから貨物を船でどんどん運ぼうというときになって、まったく船を手に入れられなくなってしまった、という事態を招きかねません。そうなってからでは遅いのです」と山本社長。

 波光きらめく佐伯市の海。幼い頃からこの海と、そこに浮かぶ船を見て幼い頃から育ってきた。あえて自社の事業に必要がない仕事を請け負い、ぎょう鉄技能を若手職人に身につけさせているのも、何とかして内航業界を活性化させたいという、山本社長の熱い思いの表れだ。

波光かがやく佐伯湾

(了)
【黒岩 理恵子】

≪ (前) | 

<COMPANY INFORMATION>
共栄船渠(株)
代 表:山本 健二
所在地:大分県佐伯市鶴望4665
設 立:1973年
資本金:3,000万円


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