<国際的信頼を失う?>
現在、日本は米国との間で日米安全保障条約を締結している。この条約は、日本がどこかの国から攻撃された場合、米国は日本を軍事力によって防衛する義務をもつが、日本は米国が他の国から攻撃された場合でも、なんらの防衛義務を負わないという片務的なものとなっている。日本政府の解釈では、救援に行って相手国と応戦すれば、集団的自衛権の行使となり憲法違反になる。
実際、朝鮮半島や台湾海峡等で紛争が起きれば、東アジア地域の安定のために米軍が出動することになる。現在のガイドライン(日米防衛協力のための指針)では、後方支援は可能となっているが、それでも有事に際し、米軍と一体になるような行動は、集団的自衛権の行使にあたり、憲法上行使できないとでもいうのか。
米軍が日本近海で血を流しているとき、日本は日本国憲法を盾に、ただ手をこまねいていたら、米国人は日本人を軽蔑するに違いない。米国から信頼を失うだけでなく、世界からも侮蔑を招くことになるだろう。
さらに言えば、日本は数多くのPKO(国連平和維持活動)に参加をしてきた。現在も南スーダンでPKO活動を続けている。今まで1度も自衛隊の基地(宿営地)や活動エリアが、テロリストや反政府ゲリラなどから攻撃を受けなかったのは不幸中の幸いだ。しかし、将来もPKO活動に派遣された自衛隊が攻撃を受けないという保障はどこにもない。
自衛隊が攻撃されれば、隣接部隊に支援要請をするだろうし、一方、他国部隊が攻撃されれば、自衛隊に支援要請がある場合も考えられる。そのときに、自衛隊が他国部隊を支援する行為は、集団的自衛権の行使にあたり、憲法違反となるので、支援ができないと断れば、日本が今までPKO活動で積み上げてきた国際社会での高い評価は、いっぺんに崩壊するに違いない。
<現場ではすでに行使されている>
インド洋の海賊対処では、海上自衛隊は米国をはじめ友邦国の艦船に給油を行なっているが、日本政府は「それらの国の軍事行動を直接支援したのではなかった(武力との一体化はなかった)ので、集団的自衛権の行使ではなかった」としてきた。
しかし、海上自衛隊から給油を受けた外国の艦船で、日本が集団的自衛権を行使しなかったとは思っていないはずだ。
各国と共同で活動しているソマリア沖やアデン湾での海賊対処に日本は、護衛艦や対潜哨戒機P3Cなどを派遣し、アフリカのジブチに10カ国以上の部隊とともに基地を持って活動を続けている。
これら一連の活動は、集団的自衛権の行使そのものではないのか。現場ではすでに集団的自衛権の行使が行わなれているのであり、憲法解釈が現実の活動(実態)に追いついていないのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ。
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