台湾では「北京烤鴨(ダック)」のことを「北平烤鴨」と呼ぶことがある。中華民国の統治概念で、北京を「北平(ペイピン)」という都市名で認識する歴史があるからだ。台湾で販売されている一部の世界地図は「北京」の文字はなく「北平」と表記されている。しかし、テレビのニュースや空港の行先表示には「北京」となっており、国の歴史認識が国内で割れるのは日本も台湾にもあること。台湾の「北平烤鴨」という呼び名は、中華民国が大陸を統治していた時代の「名残」を残した格好だ。だから、北京を訪れ「北平烤鴨(ペイピンカオヤー)」と言うと嫌がられるので注意が必要だ。
北京のみならず台湾にも数多くの北京ダックの名店があるが、なかでも台南市の「天福楼」(安平区永華路二段363號)は、「価格はさほど高くないものの、肉の味は絶品!」と評判が高い。オープンして20年、台湾南部で飼育され、自家のかまどでじっくり焼き上げられたアヒルは、丁寧に切り分けられ、その光沢が食欲をそそる。皮の部分と肉の部分が合わせて盛られ出てくるが、皮はパリパリ、肉はジューシーさに溢れ、客を満足させる。シェフの1人は「肉にも焼き方にもこだわっています。自信を持ってお客さんに提供できる味わいです」と胸を張る。
北京ダックの食べ方は、「小麦で作られた皮に肉や葱を巻き食べる」のが主流で、この店でも皮が出されるが、台湾では「随便(適当に)」でも大丈夫。食べ方にこだわらず、ただ箸で取り、甘いダレにつけて食べる客も多い。中華民国が大陸から台湾に移る際に大陸中の名シェフを連れてきたとされ、それが「台湾グルメ天国」を築いた1つの「説」ともされている。
台湾は地元料理のみならず、中国大陸各地方の料理が食べられる。中国大陸すべてを回るのは大変なので、台湾でまとめて中国料理を味わうのも良いだろう。
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