大阪は、筆者が1年前に訪れた時よりさらに活気が増している感がある。注目は、「あべのハルカス」が3月にグランドオープンした阿倍野地区だ。名実ともに、「キタ」と「ミナミ」と並ぶ第三の主要地区になっている。
だが、驚くのは、賑わいが「あべのハルカス」だけではないことだ。
<躍動する街 商都大阪の底力>
「キタ」「ミナミ」と言われる梅田および難波・心斎橋周辺地区の商業施設へ往来する人の多さで、どこも混雑しているといっていい。しかも平日の昼の時間帯である。これら繁華街やその周辺の道を歩くと、その中心地区の『路地裏』にも人の多さが印象的である。
地下鉄および主要私鉄(阪急、阪神、京阪、南海、近鉄)、JRの利用客の多さからも、活況がうかがえる。平日休日問わず、どの時間帯に乗っても満員状態(昼間でもラッシュアワーの状態の時がある)なのだ。
商圏が広がったのか、一回り大きなエリアから人を呼び込み、「キタ」「ミナミ」「阿倍野」が連動するかのように、大阪が躍動している。
消費税8%へのアップ前の駆け込み需要や学校が春休みになったというプラス要因が後押ししていることを差し引いても、街に出ている人々が増加し、商業施設や店舗の商況が、上昇傾向にあることは明白だ。
「大阪経済の地盤沈下」と揶揄された状況ではないことは確かである。
<激戦区・キタ、ミナミ、新旧融合で活気>
「キタ」の梅田地区は、主要ターミナルの一つで、阪急・阪神・JRそして大阪市営地下鉄(御堂筋・四ツ橋・谷町各線)が乗り入れている。多数の商業施設がひしめき合い、さらには充実した地下街がある。
古くから梅田のシンボルであった阪急・阪神百貨店、阪急系列の複合施設。後発に大丸、そして三越伊勢丹が出店。その後、新興勢力でヨドバシカメラ、近年のグランフロント大阪の進出。旧阪急ファイブの「HEP FIVE」、旧ナビオ阪急の「HEP NAVIO」、梅田オーパ、ルクアなどの複合施設やファッションビルなどの、激戦区である。各店舗・施設とも概ね賑わっている光景が目立った。
新たな開発・出店が、競争激化とともに、客を引き寄せている。京都・神戸・大阪北部の居住者が主力マーケットだったのが、大阪府南部からの訪問客が増加傾向にあるという。
「ミナミ」の難波・心斎橋地区も、「キタ」と並んで、大阪を代表する繁華街である。近年では、旧大阪球場跡地に新設された複合施設の「なんばパークス」や、南海電鉄難波駅前の旧南街会館跡地に建てられた丸井系のファッションビルの「なんばマルイ」が新規進出した。
古くから親しまれている戎橋・心斎橋筋の商店街は、2000年代に入ってからそれまでの店舗構成とは様変わりしているが、新旧の店舗が融合し活気づいている。
<地上300mの「あべのハルカス」、地域一帯で盛り上がり>
そして、地上300m、日本一の高さのビルに生まれ変わった「あべのハルカス」がある阿倍野地区の活気は、想像以上だった。
「あべのハルカス」は、近鉄百貨店阿倍野店を建替えて、名称を「あべのハルカス近鉄本店」に変更、3月7日にグランドオープンした。百貨店事業をはじめ、美術館などの流通部門、ホテル部門、オフィス賃貸を主力とする不動産部門、そして近畿日本鉄道(株)の中核事業である鉄道部門の4つが集積するランドマークとして、期待が高まっている。
周辺の商業施設の「あべのキューズモール」、JR天王寺駅に隣接する「天王寺MiO」との相乗効果もあり、阿倍野地区へ訪れる人々が激増している。
商業施設を中心とした大阪都心部の現状を見ると、これら3地区が活気ある賑わいを見せている共通点がある。それは、「人々に喜んでいただく」というマネジメントの実践、企業間の垣根を越えた連動・連携した運営によって地区・地域を活性化させようとするマインドの醸成だ。博多・天神という2極を持つ150万都市・福岡の発展にとってもキーポイントになるのではないだろうか。いや、福岡だけではない。日本浮上の序章は、東京オリンピックだけではない。すでに大阪で始まっていると言って過言ではない。
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