通常、我々が神社に参拝する際、賽銭箱にお賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らした後に二拝二拍手一拝の作法でもって拝礼する社殿のことを「拝殿」という。拝殿は、神さまへの祭祀や神職による祈祷のほか、正式参拝などが行なわれる場所である。
それに対し、一般的には拝殿の奥に位置し、奉られてある神さまの御神体が安置されている神聖な社殿のことを「本殿」という。拝殿が「人のための社殿」だとするならば、本殿は「神さまのための社殿」だと言える。
宮地嶽神社の場合は、前回触れた巨大な注連縄が下げられた社殿こそが拝殿であり、本殿はその奥に位置している。この本殿は、あまりにも印象的で存在感のある拝殿の影に隠れたように配置されているため、正面からは少々見づらいし、参拝客からもなかなか気づかれにくい。だが、実はこの本殿にも、見るものを圧倒するある印象的な特徴がある。
それは、この本殿の屋根が、まばゆいばかりの黄金色に輝いていることだ――。
とはいえ、この本殿の屋根は、何も最初からこのような黄金色をしていたわけではない。
創建が約1,600年前という宮地嶽神社の由緒については前回触れたが、この由緒以外にも同神社には長い歴史を有するものが存在する。
それは、「地下の正倉院」とも称される日本最大級の横穴式石室を有する巨石古墳だ。この古墳について、詳しくは次回以降で触れることにするが、発見された数多くの出土品のなかには、黄金を使った品々も含まれている。これら黄金の冠や装具、馬具などの出土品から、宮地嶽の古墳の主は、北部九州に君臨する王と呼ぶにふさわしい人物だったことが予想されている。この宮地嶽神社の地は、かつては北部九州王朝の「聖地」として栄えた場所なのだ。
そして2010年10月、創建から約1,600年の時を経て、本殿の御遷座80年の節目に合わせて、宮地嶽神社の本殿は黄金の屋根に生まれ変わったのだ。その様は、あたかも宮地嶽の古墳の主が頭上に掲げていた黄金の宝冠のように、まばゆいばかりに光り輝いている。
▼関連リンク
・宮地嶽神社HP
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