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福岡の特選企業

世界初のREDD+事業会社(後)
福岡の特選企業
2014年4月 2日 07:00
ワイ・エルビルディング(株)代表取締役社長 山本 亮 氏

 森林保護企業のワイ・エルビルディング(株)(以下、YLB)は、日本の経済産業省から環境保全に関する事業の調査「地球温暖化問題対策調査(非エネルギー起源温室効果ガス関連地球温暖化対策技術普及等推進事業)」の委託を受けている。毎年調査報告書を提出し、日本やインドネシア政府がREDD+事業をどのように捉えているかをしっかりと認識している。

<「セーフガード」という概念を理解することの難しさ>
 ――インドネシア政府は、REDD+事業について、どのように考えているのでしょうか。

 山本 弊社が経産省に提出している調査報告書のなかでも述べているのですが、まず途上国は、REDD+事業を歓迎しています。IPCC(気象変動に関する政府間パネル)によれば、世界の温室効果ガスの排出量の約17%が途上国の森林減少・劣化に由来すると言われています。2007年のバリ行動計画で、次期枠組みの緩和行動の一種として合意された「REDD+」は、途上国の関心も高く、国連を含むさまざまな場で制度構築のための議論が進展しています。森林減少・劣化が進行している地域の多くは途上国であり、それゆえにREDD+活動による国の持続可能な発展を期待する途上国も少なくないのです。インドネシアもその1国です。
 インドネシアは、「インドネシアREDD+国家戦略」を公開しており、14年のREDD+完全実施を目指した制度・体制の確立のために、関係機関も明確に設置して力を入れています。環境ビジネスを志す企業や団体にとっては、開拓地として注目するに値すると言えるでしょう。

 ――日本政府は、どう考えているのですか。
 
保護林環境サービス利用事業許可 山本 日本政府も途上国などにおいて、我が国の有する技術などを活用した排出削減事業を実施し、そこで達成された排出削減に対する我が国の貢献を適切に評価するJCM(旧・BOCM「二国間オフセット・クレジット制度」)の構築を目指しています。日本が途上国のニーズをくみ取り、適切な支援・技術提供を行なうことで、REDD+が大きく発展し、Win-Winの関係で環境保全事業が成立することが期待されています。しかし、インドネシア国内でREDD+を事業として行なうのは非常に難しいのです。その難しさを、企業側も察しているのではないでしょうか。

 ――難しさの主因は何ですか。

 山本 インドネシア政府が重視する「REDD+におけるセーフガード」という概念を、企業が理解および実践できていないことでしょうね。REDD+におけるセーフガードとは、REDD+を行なうことで引き起こされるリスクを発生させないようにすることです。
 たとえば、小集団で森を守り生きてきた住民たちが、企業等の介入で中央集権化された管理体制のなかに加わることを余儀なくされ、今まで得ていた権利を奪われたり、機械的な植林によって単純林ばかりが増加して、森林の機能そのものが低下するような事態を避けることを指します。森に住む民もその大切な環境の一部なのです。それを忘れて森林のCO2を吸収する機能ばかりを重視した結果、本来森林が持っている多用な機能とそこに住む人々のことを無視した事業計画を一般の企業は立ててしまいがちです。だからでしょうね、弊社の社員がインドネシアの林業庁へ行くと、不満の声をよく耳にするそうです。

 ――たしかに住民が「環境が良くなった」と考えるのは、彼らが自分たちの生活が何らかのかたちで過ごしやすくなったと実感したときなのでしょうね。

 山本 とくにインドネシアは、セーフガードのなかでも「社会環境セーフガード」と呼ばれる、先住民や地域住民の知識や権利を尊重することを始めとするものを重視していますから、なおのことです。これを理解するためには、現地住民の気持ちに本気で寄り添う必要があります。実際に同じ釜の飯を食うぐらいのことをして彼らの懐に入り込まなくては無理でしょうが、その難しさを壁と考える企業がほとんどだと思いますよ。インドネシアでマングローブ植林活動に取り組む企業のうち、活動を事業化できるまでに極めてみようと思う企業は僅少だと思います。

<世界に評価されつつあるYLBの企業理念>
 ――御社は、設立当時から原住民の人々と生活をともにしながら植林事業や調査を行ない、社員の女性が「ボス」と呼ばれて尊敬されるほどに信頼を得ています。まさに「社会環境セーフガード」という言葉ができる前からその概念を実践していたのですから、評価されるのは当然だったのでしょうね。

 山本 「セーフガード」の概念を具体的に実践していける仕組みづくりは、どの国の、どの企業よりも先につくり上げたという自信はありますよ。実は事業許可が下りたのは7月だったんです。その後、事業の開設に必要な事業計画書の作成に力を注ぎ、やっと昨年末完成させ、インドネシア共和国林業大臣を始めとする同国関係機関長へ配布したところです。今後、YLBは、グループ会社の㈱ワイエルインベストなどとともに、インドネシア国内でのREDD+事業に着手していくことになります。

 ――今後の発展が期待されますね。本日はどうもありがとうございました。

(了)

≪ (前) | 

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 亮
所在地:福岡市中央区天神4-1-11
設 立:1999年12月
資本金:1,000万円
TEL:092-734-7722
URL:http://ylinvest.sub.jp/ylbld/

<PROFILE>
ワイ・エルビルディング(株)代表取締役社長 山本 亮 氏ワイ・エルビルディング(株)
山本 亮(やまもと・あきら)

1935年、大分県生まれ。大分県佐伯市立大入島中学校卒。70年2月、外材輸入商社「山本木材産業」を設立。2004年7月から、マングローブ植林による環境ビジネスをインドネシアにて開始。11年、ドイツ・ボンで開催されたUNFCCのワークショップにて、その業績が国際的に認められる。


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