宮地嶽神社のなかで、近年とくに注目を集めているスポットがある。それは、「奥の宮八社」と呼ばれる8つの社だ。位置的には、前回ご紹介した拝殿や本殿から、文字通りさらに奥に進んだエリアになる。
この「奥の宮八社」は、「一社一社をお参りすれば大願が叶う」と言われており、昔から多くの人が訪れている場所である。だが、以前までは、どちらかと言うと"知る人ぞ知る"隠れスポット的な要素が強かった。しかし、近年は折からのパワースポットブームなどもあって、以前よりさらに多くの人が足を運ぶようになっているようだ。
それぞれ異なる神さまが祀られており、さまざまなご利益をもたらしてくれる8つの社を、1社ずつ順にご紹介していくとしよう。
<七福神社>
第1番社の「七福神社」には、恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋の7柱――ご存知「七福神」が祀られている。もたらしてくれる福徳は、「商売繁昌」や「開運」「長寿」などさまざまで、多くの人々の信仰を集めている社だ。
<稲荷神社>
「お稲荷さん」の呼び名で親しまれ、鮮やかな朱色の鳥居が印象的な「稲荷神社」が、奥の宮の第2番社になる。稲荷とはもともと「稲が成る」と書き、稲の豊かな実りを守る神さまと言われている。そこから転じて、現在では「商売繁盛」や「五穀豊穣」を司る神さまとされており、商売人や農家などを中心に多くの人々が参拝している。
<不動神社>
第3番社の「不動神社」は、右手に剣を、左手に縄を持ち、災厄を除く神さまとして知られる不動明王を祀る社だ。この不動神社、前回少し触れた日本最大級の横穴式石室古墳のなかに不動明王を祀っており、何とも重厚で神聖な雰囲気が漂っている。毎年3回、1月と2月、7月のそれぞれ28日のみ、石室内に入って参拝することができる。
なお、こちらの古墳については、次回さらに詳しく触れていく。
<万地蔵尊>
第4番社の「万地蔵尊」には、子どもたちや旅人の守り神でもあるお地蔵さまが祀られている。お地蔵さまの丸いお顔は子どものように無邪気でにこやか。とくに、ここ宮地嶽神社のお地蔵さまは「万地蔵さま」と呼ばれており、子どもの願いごとは何でも聞いていただけるお地蔵さまだ。
<恋の宮>
婦人病にご利益があると言われる淡島大明神、恋心を叶えてくれると言われる濡髪大明神の2柱が祀られているのが第5番社の「恋の宮」だ。淡島大明神は女性の身体を、濡髪大明神は女性の心を、2柱合わせて女性の心身内外をお守りする神さまとなっており、奥の宮八社のなかでも、とくに女性からの人気を集めているようだ。恋の宮のすぐ脇に設けられたハート型の奉納所には、「恋むすび」のお札が所狭しと掲げられており、大勢の人々の恋の祈りが捧げられている。
なお、私的なエピソードで恐縮だが、筆者も2年前にこの恋の宮にお参りをしたことがある。そのときはさほどご利益など期待していなかったのだが、お参りしてから約1カ月後に縁あって出会った女性が、現在の妻だ。そのご利益のパワー恐るべし、といったところか。余談までに――。
<三宝荒神>
第6番社の「三宝荒神」に祀られているのは、荒々しい火の神さまであり、火をコントロールする霊力があるとされている。そのため、昔から竈(かまど)の守り神、つまり台所や調理の神さまとしての信仰を集めている。
<水神社>
万物の源である水を司る神さま「水波能売命(みずはのめのみこと)」が祀られているのが、第7番社の「水神社」である。すぐ横には、コンコンと水が湧き出ている「龍の玉」が設けられており、古くからこの地域に暮らしてきた人々の水に対する思いや信仰が込められている。
<薬師神社>
第8番社の「薬師神社」は、かつて修験者が宮地嶽の山中で修行を行なう際に、病気や怪我がないようにとお薬師さまをお祀りしたのが始まりとされている。病に苦しむ人々からの信仰が強く、病気平癒にご利益がある社となっている。
と、ここまで、8つの社すべてをめぐり祈願すれば、大願が成就すると言われている「奥の宮八社」を駆け足で紹介した。宮地嶽神社の社務所には、1社ごとに設けられたスタンプラリーの用紙が用意されているほか、「奥の宮八社」をめぐりながら参拝する際、よりご利益が期待できるロウソクと線香のセットの販売も行なわれている。宮地嶽神社に参拝に訪れた際は、大注連縄のある拝殿でお参りするだけでなく、その奥にまで足を伸ばしてみるのもいいだろう。
▼関連リンク
・宮地嶽神社HP
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