<官では限界、民の力が>
今、大阪は、官より民が面白い。
福岡から大阪へ行く手段は従来、新幹線が中心であった。ところが、関西国際空港から大阪都心部へのアクセスが良好となり、またLCC(Low Cost Carrier=格安航空会社)の参入で、同空港の利便性が高まって、状況が様変わりしている。
同空港から阿倍野、天王寺まで最短で約30分。難波まで35分。大阪、新大阪までは45~50分と1時間もかからないアクセスが可能になった。
統計はとっていないが、"感覚値"で言うと、福岡から大阪へビジネスで行く時は関西国際空港を利用する人が増加している感がある。逆方向の大阪から福岡もしかり。同空港に降りると、ビジネスだけでなく、プライベートの旅行などレジャー目的での来訪者の姿も多く見られた。外国人の姿も大阪の各所で多くなったのも、アクセスが良好になったことも要因であるとみる。
古今東西、交通手段の発達は、人の交流、物流を飛躍させ、経済の活性化を生み出した。何も空港へのアクセス向上だけが原因ではないが、大阪の民間活力は急上昇している。
<大阪市長選に冷ややかな視線>
逆に官の勢いは失速していている。
2014年3月23日に出直し大阪市長選挙が実施され、結果は、橋下徹氏が再選を果たした。有力な対抗馬となる候補者が居らず、投票率23.59%で、前回11年11月の市長選の60.92%から大幅に下がった。大阪市長選挙で史上最低の投票率であった。
橋下市長への得票数は、37万7,472票。次に多い『得票』は無効であった。その数6万7,506票で、うち白票が4万5,098もあった。6億円を超える血税が注ぎ込まれたが、上記の惨状となった。
複数の大阪市民にヒアリングした。
「選挙権をいただいて以来、投票の棄権をしたことがなかったので投票所に足を運んだ。が、やはり今回の橋下さんのやり方には到底納得出来ず、何も書かずに投票した。橋下さんの目指す市の既得権益を潰して、市民のために新たな大阪を作ろうとする理念と行動力は素晴らしかったが...。国政に噛んでからほころびが出た。市政に一点集中してやり遂げるということをしていただきたかった。正直がっかりだ。もう橋下さんは応援出来ない」「あんな態度は、単なる駄々っ子と同じ。大阪府知事の時も任期途中であったが、こらえ性がないというのか。今回の選挙は、橋下さんの求心力急落を示したと思う。私?投票所には行ったが、該当者なしと書いた。だから無効票」と、冷ややかな感想を持った市民の声が多数聞けた。もちろん37万票という支持を得たことも確かだが、有権者数が約214万人という中での37万はけっして大きいとは言えない。
<商都大阪の底力に無限の可能性>
「もう橋下市長の力では大阪を変えられないということ。すなわち大阪都構想の実現も極めて厳しいという結果であろう」。福岡県の経済アナリストは、こう語る。「反面、大阪の経済は元気が出てきているのではないか。特に商業関連での盛り上がりは勢いを感じる。やはり官だけでは大阪を復権出来ない。民間の力には、無限の可能性を感じる。商都大阪の底力が徐々に現れてきている」。
筆者は、3月下旬に大阪の地に立った。JR天王寺駅で下車して、阿倍野地区へ向かう中で、行き来する人々の数の多さに圧倒された。平日の午後2時前後であったが、老若男女問わず多い。当地出身の筆者は、平日の阿倍野地区がこれほどまでに人が多いという体験は過去にない。
それは、3月7日にグランドオープンした近畿日本鉄道(株)の『あべのハルカス』の影響であった。
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