三菱東京UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀)の労働組合が、窓口業務などに従事している非正規行員に対して、労働組合への加入を認めたことがわかった。
三菱UFJ銀は約4万8,000人いる従業員のうち、正規行員は3万6,499人(平成25年3月末)で、残り約1万2,000人が会社と期間限定で雇用契約を結ぶ契約行員となっている。
非正規の行員は4人に1人の割合と大きなウエイトを占めてはいるものの、組合への加入資格はなく、時給の引き上げなど労働条件の改善を要求するには、1人ひとりが個別に交渉する必要があった。
三菱UFJ銀の労組とすれば、非正規行員は支店での窓口業務や顧客の案内だけではなく、窓口後方での専用端末の操作、伝票記帳、電話対応、現金整理など一般行員と変わらない業務に携わっており、このまま非組合員の雇用が増加すれば組合員の職場が縮小し、組織が弱体化する恐れがあった。
一方、経営側としても、外部組織が「1人でも組合に加入できます」を謳い文句に、非正規行員をターゲットに組合加入を勧誘する動きが活発化してきたため、第二組合」設立の芽を摘み取らなければならない事態に直面していた。
そのため労組と経営側との思惑が一致。三菱UFJ銀の労組は今年三月に組合規約を改正し、非正規行員の組合加入を認めることにしたというのが真相のようだ。
三菱UFJ銀の労組は銀行の業績が好調なため、経営側に今年の春闘で基本給を0.5%引き上げるベースアップ(ベア)を申請し認められたが、非正規行員は対象外だった。
すでに約5,000人が加入しており、新しく採用される非正規行員も全員が組合員になることができる。また、待遇向上も労使交渉の場で要求できるようになるほか、経営側も組合の同意なしに労働条件を変更できなくなる。今後、三菱UFJ銀の労組は、正規、非正規を問わず職場全体の待遇改善を図ることになる。
三菱UFJ銀などの大手銀行のみならず地方の銀行においても、非正規行員のウエイトが高くなってきており、無視できない存在となっていた。そのため、何らかの囲い込みをしなくてはならない時期に来ていたとの見方もできる。
金融界で非正規行員の労組加入は三菱UFJ銀が初めてとなるが、今後追従する銀行も出てくるものと思われる。ただ、正規と非正規行員との職場環境のバランスをどのようにとっていくかが、大きな課題となる。
もしそのバランスが崩れて組合が分裂する事態が発生するようなことになれば、大きな労働争議に発展する可能性も秘めており、三菱東京UFJ銀行の決断が金融界に与えた影響は計り知れないものがあると言えよう。
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