<多様な中国関連のシナリオ>
そのなかで、ある日本の経済学者が分析した中国経済に対する展望は、かなり説得力があった。その日本の学者は、中国の経済状況は20年前の日本の経済状況とかなり類似している、と指摘している。
日本の経済が衰退し始めた時期を、1985年のプラザ合意であると指摘する学者もいる一方で、大多数は90年代の初めに始まったバブル経済の崩壊を挙げている。当時、日本全国の不動産価格の合計金額は2,000兆円で、アメリカを4つ買えるような金額であった。バブルがはじけ、不動産価格が半分に、また3分の1にまでなったところもある。経済成長で蓄積した資金を不動産につぎ込んだことによる後遺症が現れることによって、日本経済は不調に陥ったのである。日本の経済学者は、中国の不動産市場の状況は、その当時の日本と似ていると指摘している。中国不動産のバブルがはじけるのは時間の問題であると見られていて、その兆候がいろいろなところで現れ始めている。中国経済にある程度知識のある人であれば、中国が高度成長をする過程で建設と不動産に資金が必要以上に流れ込んでいて、バブル気味であることは知っている。
それに供給過剰の問題も抱えている。90年代の初めに、日本の産業界は家電、鉄鋼、化学、自動車、半導体、エネルギーなど、全産業において供給過剰がピークに達していた。当時の日本の企業は、今後も市場で需要が持続的に増加すると予想し、設備投資を続けていた。
しかし、急激に需要が冷え込み、その結果、大規模のリストラを実行せざるを得なくなったし、企業が倒産することによって発生する失業も急増した。このような供給過剰も、今現在の中国経済においては、大きな悩みのタネの1つである。
日本経済がぶち当たった高齢化問題にも、中国は直面している。14億人に達する人口大国である中国では、高齢化が急速に進んでいて、それも大きな問題を孕んでいる。老人人口の増加と人口増加を抑制するために取った産児制限の結果、労働人口の減少がそれである。急激に増えつつある人口を何とか抑えようとして取った政策が、別の問題を起こしているのだ。産業現場に新規労働力の投入が減っているし、2030年頃には、中国は労働者を外国から入れないといけないようになると言う予想すらある。
二十余年前の日本経済との類似性以外にも、最近、中国に対する悲観的な意見が段々多くなっている。
ウォールストリートジャーナルのコラムニストであるマイケル・オースリンは、「中国のパーティーは終わった」という記事で、長期間累積されてた中国の問題はこれ以上放置できない状況になっていると警告している。彼は、「バラ色であった中国経済は今後20年間大きな試練に立たされるだろうし、その結果は誰も予断できない」と言っている。
それに、中国は日本と違って、金融システムが整備されていない。最近話題になっているシャドーバンキングの問題は、金融制度が整備されていないなかで出てきた問題である。
地理的に、韓国は日本と中国の間に位置している。日本と中国が政治的にも、経済的にも安定して発展していくのが望ましいのだ。しかし、現実は楽観論と悲観論がオーバーラップしていて、判断が難しい。ある人は日本の復活を主張するし、またある人は中国は今後も成長し続けると言い切る。しかし、私たちはもっと冷静になって未来を見つめ、バランスの取れた視点で未来を予測する必要がある。
今、日本、中国、韓国は経済問題だけでなく、歴史問題などでどの時期よりも関係が悪化しているし、ギクシャクしている。今はグローバル時代で、自国だけで完結するものは少なくなっている。つまり、お互いにかなり複雑に関連している。政治家、マスコミが中心になって、まるで相手の国の国民がそのような考え方をしているかのような印象を植え付けてしまうが、実際はかなり違うのですごく残念である。
相手を理解する努力なしに、相手を非難するだけでは何の発展も期待できない。人間はバカであり、自分で直接経験していない苦しみを理解することは難しいが、長い歴史のなかでやっとアジアに経済の軸が移ってきた今、愚かにもお互いに感情的になってチャンスをつぶしてしまうのはどうだろうか――。
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