紳士服業界第2位のAOKIの詐欺行為を暴く記事が4月に入って、ニュースサイト「HUNER」によって相次いで配信された。
HUNTERは、AOKIが1日5組限定のセット販売を餌に客を集め、実際には5セット売れていないのに「売れた」として、その倍近い価格で商品を消費者に売りつけたことを暴露。「詐欺商法だ」として、これまでの経緯を同サイトで配信した。これが大きな反響を呼び、同サイトへアクセスが集中。先週末から、同サイトは繋がりにくくなっていた。
NET-IB取材班は、HUNTERの報道内容を確認するため、AOKIグループを統括する(株)AOKIホールディング(以下「AOKI HD」)に直接取材した。紳士服を販売しているのは「AOKI HD」の子会社「株式会社AOKI」である。
「AOKI HD」の広報室に電話をしたが、担当が打ち合わせ中ということで不在。「折り返し電話します」との返事から約3時間連絡がなかった。改めて広報室に電話したところ、担当はまだ不在。あきらめかけたときに折り返しの電話が鳴った。
やっと連絡がついた「AOKI HD」の広報担当に3つの質問をした。
まず、HUNERの記者との一連のやり取りは事実か。これに対し、「AOKI HD」の広報担当は「(AOKI福岡清水店が)用意していたセット5組がすべて販売し終えたとの誤認でありました。清水店のミスであります。そして、お客様とやり取りはすべて事実であります」「当社はお客様にご迷惑をかけたことを真摯に受け止め、お客様が納得を得られるように、謝罪、説明をさせております」と述べた。「誤認」ということは、騙す意志はなく、詐欺行為ではないということ。この点、HUNTERの主張とは違っており、火消しに躍起となっているAOKI側の事情がうかがえる。
2つ目として、役員がHUNTERの記者と接触したのは事実かとの質問をした。担当者は「組織として適正な部署が対応しました」と即答したが、奥歯に物が挟まったような言い方。釈然としない。「適正な部署の方とは?」と聞き直すと、「役員です」とのこと。HUNTERは、8日の記事でAOKIを代表して出てきたのが株式会社AOKIの専務だったと明らかにしており、だとすれば「AOKI HD」の役員ではない。どうも話がおかしい。
最後に、AOKIとして今度どのような対応をしていくのか、との問いに、「現在の認識としては、個店のミスと捉えています。お客様のご意見を受け、再発防止に努めます」との回答だった。
要するに本社としては"清水店のミスなので、清水店で決着を付けるべき"ということらしい。トカゲの尻尾を差し出して、うまく逃れるつもりなのだ。また、「改めてHUNTERの記者との席を設ける考えはない」としており、グループ本体として対応していくことを事実上否定した。まさに居直りである。
今回の件はAOKIを含めた紳士服業界全体に一石を投じたものだ。実際に詐欺まがいの広告に嫌気が差している消費者は大勢いるはずだ。「AOKI HD」本社も、九州の片田舎の小さな事件として軽く見ると、痛い目をみるだろう。それはHUNTERへの膨大なアクセスが如実に物語っている。
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