しかし、これら同社の加工品にも弱点があった。それは、新鮮な原材料を使っているが故に商品数を大量に用意できないことだ。「アキラの鯛茶」は今のところ、本社のある市場会館の販売店でしか販売されていない。機内誌で商品を知った人が飛行機を降りて空港からタクシーを飛ばし、市場会館まで買いに来たという例もあるほど、一般ではなかなか入手困難な商品でもあるのだ。ほかの加工品に関しても、鯛茶ほど極端ではないが、数多く販売されているわけではない。
そんな加工事業はこれまでは、同社の補完サービスの一面だった。しかし、魚食普及にはこの事業を強化する必要があると事業を再検討し、2012年10月に加工事業部を(株)ハクヨーとして分社化することにした。また、早期に独立採算できるように、新たな強化策に取り組み始めた。
早急の課題として販売網の拡充があるが、現在取引のある量販店に対して、改めて加工品の売り込みを強めていく。すでに九州のみならず関東・関西の量販店からの問い合わせも来ているという。さらに、テレビの通販番組への商品提供やこれまで用意していなかった商品案内用パンフレットなどの販売ツールも制作し、「知る人ぞ知る」から「みんな知っている」商品へと認知度を高めていく。
一方、商品ラインナップについても、すでに市内有名ホテルから招聘した開発担当者のレシピにより、好評であった「アキラの鯛茶」をさらにシリーズ化。「胡麻味」とちょっと大人の味の「唐辛子醤油味」を加え、美味しいと大好評を得ている。また、今年度中には次の新商品をリリースする予定だ。
そのほかにもITツール活用を主力に取り組む予定だ。市場に来られないお客さまにも、「見える化」した福岡鮮魚市場の正確でタイムリーな情報をどうすればきちんとお届けできるかを課題に、上田副社長を筆頭に猛勉強している。
まだまだ実験段階だが、福岡のお客さまのみならず、東京や大阪のお客さまからの反応もあるようだ。
<組織力の強化・深化で揺るぎない水産業界のリーダーへ>
昨年度までは立体駐車場の建設や新会社の立ち上げ、新規事業への取り組みなど経営の多角化を進め、基盤強化を図ってきた。今年度はそれらの事業の安定化を目指しながら、「本業回帰」として今一度本来の水産業仲卸としての役目を時代の進化に合わせて取り組みたいとする同社。
水産業のリーダー企業として、魚に関わる業界全体の底上げを行ないながら、魚を食べなくなった・調理をしなくなった世代の人たちや販売に関わる人たちに食べ方や仲卸としての売り方を、新しい切り口での商品情報などを提供したいと考えている。そして、それを基に安部社長の大きな目標である、グループ全体で「100億円企業」の達成を目指す。
安部社長の力強いリーダーシップの下、これまでも魚食普及や業界発展に尽力してきた同社は、「本業回帰」でユネスコ無形文化遺産「和食」の拡大に挑む。
≪ (前) |
<COMPANY INFORMATION>
代 表:安部 泰宏
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-711
設 立:1960年4月
資本金:2,000万円
TEL:092-711-6601
URL:http://www.akirasuisan.co.jp/
<PROFILE>
安部 泰宏(あべ・やすひろ)
1939年3月29日、福岡市生まれ。福岡大学附属大濠高校卒業。現在、全国水産物卸組合連合会副会長として、魚食の普及に力を注いでいる。また、九州地区水産物卸組合連合会会長として、業界振興を図る取り組みにも積極的に関わるなど骨身を惜しまぬ活動を続けている。2005年4月藍綬褒章受章、11年6月旭日雙光章受章。
※記事へのご意見はこちら