2月に福岡市で開催された「ビッグマーケット2014」で優秀賞を受賞した(株)ゼロテクノ。同社は産業廃棄物からコンクリートの耐久性を高める混和材を開発。従来のコンクリートの問題点を改善する画期的な技術が高く評価された。地方から全国、そして世界へ展開を目指す同社代表の岡田秀敏氏に聞いた。
<原点はコンクリートの劣化現象>
「私が社会に出た40年前、コンクリートの寿命は70~80年と言われていた。ところがそれが今は50年ももたない」と岡田氏は語る。劣化現象が激しくなってきた背景には良質な骨材の枯渇などでコンクリート材料の質が低下していることにある。またセメント会社はコンクリートが強度を思う余りに粒子を小さくし、セメントの反応を早めたのも一因だ。このことによって、強度は早期に発現するが、化学反応でより多くの熱が発生する。内部は温度上昇で膨張、空気に触れる外部は冷やされ収縮。この膨張と収縮によりコンクリートは温度ひび割れを起こす。「セメントの量を減らしながら、強度を増す方法を探さねばならなかった。」
注目したのが石炭灰だ。セメントの強度を増すために、混和材として使用されていたものだ。火力発電所などから排出される一部の石炭灰は廃棄処分されており、そのために多額の費用が掛かっている。「この石炭灰を容易に使用するためには」と研究は始まった。研究の舞台は大分大学工学部コンクリート工学研究室。試行錯誤を重ね、石炭灰に含まれ、コンクリート品質に悪影響を及ぼす未燃カーボンを低減させることに成功。さらに粒子をサイズごとに分級するシステムも確立した。
同社の開発したコンクリート混和材「高品質フライアッシュ」を使用すると、コンクリート内部では「ある反応」が起きる。微粒子であるフライアッシュがコンクリート内部でゆっくり化学反応を起こし、徐々に密実化するのだ。これによりセメントとの空壁(隙間)を埋めていくことができ、強度を増進する。通常、セメントは反応が停止した後、劣化が始まるが、この反応は長期にわたって継続されることがわかっている。これにより、コンクリート構造物の耐久性が向上し、100年以上という耐用年数を実現する。
<地産地消を目指す>
大分工場から出荷するのでは、運送費用が高くなる。火力発電所は全国にあるので、各地で、同製品の製造ができるのが最も効率がよい。現在、ゼロテクノは九州、沖縄、四国など全国に拡大している。大手からも声がかかっており、将来的には世界展開をも視野に入れている。
産業廃棄物が100年耐用コンクリートを生み出す。価格競争に巻き込まれずに、付加価値を見出そうとしている同社の試み。今後も注目していきたい。
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・(株)ゼロテクノ
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