<だしパックの概念を覆す画期的な活用法>
1988年の創業から「あご入だし」を全国に広めた(有)味の兵四郎。福岡県筑紫野市にある円柱状の本社社屋がトレードマーク。長崎県平戸産のあご(トビウオ)にこだわり、だし素材6種類をブレンドした「あご入兵四郎だし」を提供し続け、26年目を迎えた。本物へのこだわりがリピーターを増やし、地道な商品開発により新規顧客獲得に結び付いている。着実に業績を伸ばし、売上高は22億円に迫る。現在では調味料だけでなく、そうめんやうどん、そば、わかめにまでおよぶ。米やお茶の生産にも関わり、業容は拡大を続けている。また、和食の基本となるだしを取り扱う同社が2013年8月にシンガポールに支店を開設した。今後はシンガポールを拠点に、アジア、そして世界にあご入だしを広めようとしている。
「味の兵四郎」は、明治時代に同社代表の野見山正煇氏の祖父が営んでいた「割烹 兵四郎」が名前の由来だ。1988年、味を大切にしたいとの想いから「味乃兵四郎」として、当時はなかったあご入りだしを開発、麺つゆやだしを販売してきた。他にはないだし素材の美味しさと手軽さが受け入れられ、全国から問い合わせが入るように――。最近では、有名人のおすすめ商品として、女性誌などで何度も取り上げられている。
同社のロングセラー商品「あご入兵四郎だし」は、パックを煮出すだけで簡単にだしが取れる優れものとして誕生した。しかし、ある主婦からのヒントにより新しいアイディアが生まれた。それは、だしパックを破って直接料理に使うというもの。その主婦はチャーハンをつくっていたが、仕上げに加える中華だしがなかったため、だしパックを破いて調理したのだという。それが見事な味に仕上がり、これまでのだしパックの概念を覆す画期的な活用方法となった。それ以来、野菜炒めやおにぎり、浅漬けなど活用方法はぐっと広がっていった。
<健康志向、食文化の多様化、嗜好の変化にも対応>
「創業からこれまで、消費者の嗜好に変化を感じる」と話す野見山氏。当初は、看板商品である「兵四郎だし」に使用される「あご(トビウオ)」という魚の認知度が非常に低かった。それが徐々に認知され、あごだしの美味しさに消費者が気づき、口コミで広まっていった。さらに、時代背景も人気を後押しした。共働き家族が増え、かつおやこんぶなどで、一からだしを取ることが少なくなってきた。手軽にだしが取れる商品が好まれてきたのだ。
そして、近年感じるのが健康志向である。もともと同社のだしには、調味料が加えてあり、パックを鍋に入れ、煮出すだけで調理できる。ただ、顧客から自分で塩分調整したいとのリクエストを受け、無塩の素材だしや41%減塩だしを開発し、商品化している。さらに「だし=和食」のイメージは強く、これでは購入の動機が狭まってしまう。そのため、同社では料理教室を開催し、若者にも浸透しやすいように、パスタやグラタン、麻婆豆腐など和食以外の料理への提案も行なっている。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:野見山 正煇
所在地:福岡県筑紫野市美しが丘北3-1-3
創 業:1988年3月
資本金:500万円
TEL:092-926-3035
URL:http://www.ajino-hyoshiro.co.jp/
<PROFILE>
野見山 正煇(のみやま・まさあき)
1951年、福岡県嘉穂郡生まれ。立教大学経済学部経営学科卒。1988年「味乃兵四郎」を創業。以来、日本の和の文化を家庭に届けている。趣味は食べることと小旅行。何事もまず自分の目でたしかめるため、日本各地を飛び回っている。
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