その絶対的危機を乗り切った同社の従業員は現在29名が在籍している。このほか嘱託が10名いるが、事業規模が最大で30億円ある業者にしてはかなり少ない方である。過去に苦しい時期を経験しているだけに、なるべく少数精鋭で会社を運営していくといった思いがあるようだ。そのため、同社の経営理念は「我が社は少数精鋭で俊敏且つ誠実に快適環境創りに邁進しよう」と掲げられている。顧客からの信頼をさらに深めるため、2002年4月にISO9001:2008を認証取得。社内での業務の効率化と標準化を目指している。
もちろん、少数精鋭でもバトンタッチは徐々に行なわなければならない。来期以降、専門・実業の工業大学の卒業予定者を数名募集するとしており、着々と承継計画も進んでいる。また、その専門職を支える約100名の職人たちが同社を支えているという。彼らも苦難をともに超えてきた精鋭である。野田社長は「彼らがこの会社を支えてくれている」と感謝の念を述べている。
苦難を払拭した証としていいだろう。11年3月に、社屋を現在地に新築。現代風にデザインされた社屋はモノトーンでお洒落。駐車場も玄関も広く取られており、来客に対して細やかな心遣いが感じられる。
<好調なマンション販売の波に乗り、売上高約30億円を確保>
長い間、建設業は市場の低迷に晒されてきた。リーマン・ショック以降の民需の低迷、「コンクリートからの人へ」のスローガンのもと公共工事の抑制が顕著になった時期があった。数年前から景気回復の兆しの影響で、福岡都心部のマンション新築着工数が好調に推移してきた。マンション着工が好調になるということは、同社の仕事が多くなることを意味している。
同社の12年12月期の売上高は18億7,477万円であった。11年12月期と比較して3.5ポイントの増加である。急速な業績の拡大となった13年12月期においては、売上高29億4,900万円と急増したのだ。とくに中堅ゼネコンが発注する200戸以上~300戸までの大型物件が5件、今期受注できている。繰越しは約49億円あり、これは同社の約2年分に相当するとしている。その受け皿の体制づくりは行なわれつつあるものの、同社に限らず職人の数が絶対数に足らない状況にある。このため、事業規模の最大を売上高30億円、最小は15億円と設定し、その範囲内で請け負うことになるとしている。
低迷時、大手の設備業者は分譲マンションを敬遠していた。しかし、同社は粘り強く事業に注力していたことにより、好調に好転した際、とくに声がかかるようになった。このように粘り強く事業を推進してきた野田社長の経営手腕と義理人情が、事業規模MAXとする約30億円という売上高につながったと言える。
「素早くやる」などの意味が含まれる「Jump to it」という言葉は、同社ホームページにも記載されており、スローガンにもなっている。何事にも素早く取り組む姿勢を持つ業界トップクラスとして、今後の活躍が期待される。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:野田 弘之
所在地:福岡市早良区田村4-15-10
設 立:1982年2月
資本金:6,000万円
TEL:092-801-7247
URL:http://akebonosetubi.com
<PROFILE>
野田 弘之(のだ・ひろゆき)
1952年8月生まれ。学卒後71年6月神林工業(株)入社。83年、(株)曙設備工業所入社。87年9月、同社取締役就任。92年5月、同社代表取締役社長に就任。
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