（有）味の兵四郎

＜歩みを止めない商品開発＞
　10年ほど前から、自社で農薬・化学肥料不使用のコメづくりを開始した。きっかけは、野見山氏が友人からもらった自家製のコメと出会ったことにある。自然な甘みともっちりとした食感は、驚くべき美味しさだったという。その美味しさのワケは、農薬を使わず、有機肥料で育てる農法だったのだ。
　そこで同社ではその農法を取り入れ、栽培を開始。社員はコメづくりを体験し、米の美味しさと同時に農家の苦労を知り、それを余すことなく顧客に伝えている。牛糞などに「豊穣菌」を加え、発酵をさせた有機堆肥と数十種類のミネラルを含むミネラル液を使用することで、微生物の増加を促す。栄養たっぷりの土づくりを実現している。この農法で栽培された大地の恵みは、今「兵四郎米」として、店頭に並ぶ。さらにその「兵四郎米」を原料に、米酢も商品化。あわせ酢、橙ぽん酢、飲む酢など商品開発は進む。もち米栽培に続き、酒米の栽培にも乗り出している。
　販売においては、本社横の筑紫野本店に加え、12年に博多リバレインにイートインスペースを設けた直営店「博多リバレイン店」を出店。美味しいモノを提供して喜んでほしいとの想いは以前からあった。直に顧客の反応をたしかめることができ、感想をもらえる。食事スペースがあれば、集客にもつながり、食べた後、商品を手に取る客も多いという。

＜拡大するアジア市場、若者に夢を＞
　国内では味噌や醤油の販売量は減少しているが、海外では増加している。「海外での日本食の需要が増えてきている今、海外の市場を視野に入れていかなければならない。また、若手社員に海外という舞台で目標や夢を持たせたい」と語る野見山氏。従業員数は90名だが、平均年齢は30歳と若手が多いのだ。
　こんな想いから06年以降、香港やバンコクなどで百貨店の催事に出展。まずは東南アジアを目標に置き、13年８月に、東南アジアの中心に位置するシンガポールに支店を開設した。日本人従業員が２名駐在しており、来年にはさらに２名追加し４名体制をつくる。商品は日本と同じものを販売する予定だ。
　シンガポールに支店を開設したが、狙いはその周辺国へのアプローチである。開拓先は、日系百貨店やショッピングモールでの対面販売。この手法は創業当時から変わらない、味の兵四郎の原点とも言える販売スタイルだ。「日本のものに限らず、美味しいものは必ず世界で受け入れられる」（野見山氏）。現在は、あご入だしやめんつゆとともに麺類を合わせて販売展開しているが、現地の食事スタイルに合わせ、野菜炒めやビーフンなどへの活用も提案している。

　アジアの先には欧米を視野に入れている。海外出展を始めた当初、想定していたほど売上が伸びず、催事での経費はかさんでいた。しかし、それに耐え、根気強く現地での対面販売を続け、実績を徐々に積み上げていくことで７年かけて拠点づくりができた。体力のあるうちに下準備できたことが、シンガポール支店の開設につながっている。事業の基盤となる国内での販売量を伸ばしつつ、海外比率を高めることを目標に据え、「シンガポールに進出したからには、ASEAN（東南アジア諸国連合）10カ国を緻密に営業していく。まずは東南アジアを攻略したい。その先には欧米が待っている」と野見山氏は力強く語った。

≪　（前）　｜　

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：野見山　正煇
所在地：福岡県筑紫野市美しが丘北3-1-3
創　業：1988年３月
資本金：500万円
ＴＥＬ：092-926-3035
ＵＲＬ：http://www.ajino-hyoshiro.co.jp/

※記事へのご意見はこちら