12日、原発ゼロを目指す有識者らでつくる市民団体「原子力市民委員会」(2013年4月設立)が、「原発ゼロ社会への道―市民がつくる脱原子力政策大綱」を発表した。福島第一原発事故から3年。事故はいまだ終息せず、福島では10万人を超える人々が今も避難生活を余儀なくされている。福島県産の農産物、海産物は風評被害にさらされているが、苦境にある福島の人々への関心は薄れがちになっている。そうした現状に一石を投じた。
<原子力委員会に対する組織として>
「脱原子力政策大綱」は全部で240ページにおよぶ大作で、原発をめぐるさまざまな問題が詳細に整理されている。また、その発表にともない13日、「脱原発フォーラム『脱原発社会の創造――いま、市民として取組むべきこと』」が開催された。
「原発を重要なベース電源として引き続き活用」、「安全性が確認された原発は再稼働」などとされた「エネルギー基本計画」が今月11日、閣議決定された。政府は原発再稼働や原発輸出に向けて動きだし、「原発安全神話」が崩壊した今、いまだ原発事故の被害に悩む福島の現状を無視するかのように、「放射能安全神話」の創出に舵を切ってしまった。
同委員会は、原発事故後に「福島が忘れられつつあるのでは。孤立させてはいけない」との危機感から首都圏の住民に向けて、現状を伝えて改めてエネルギー政策の転換の必要性を考えようと市民がつくる政策調査会、市民セクター政策機構が中心となり、生協や市民グループで実行委員会を立ち上げて企画したのが始まりという。
「既存の『原子力委員会』は、原子力関係者による、原子力関係者のための組織として、原子力政策の企画・審議・決定を行なってきたものと、私たちは認識している。それに対して『原子力市民委員会』は、市民の公共利益の観点に立って、原子力政策の企画・審議・提言を行なう点で、原子力委員会と大きく異なっている」(原子力市民委員会「設立趣意書」より)。
原子力市民委員会が取り組む課題は大きく4つに分かれる。
(1)東電福島第一原発事故の被災地対策・被災者支援
(2)使用済核燃料、核廃棄物の管理・処分
(3)原発ゼロ社会構築への具体的な行程
(4)脱原発を前提とした原子力規制
筆者は、政策大綱の「第1章 福島原発事故の被害の全貌と『人間の復興』」の土壌汚染と風評被害に注目した。なぜなら、とくに福島から遠い地域にいると、こうした現場感はなかなかメディアを通じて情報が入ってこないからだ。
今、福島県の「食」の現状はどのようになっているのか。
| (後) ≫
※記事へのご意見はこちら