今年1月31日に安倍総理のお膝元、山口県長門市にある湯本温泉の老舗ホテル「白木屋(しろきや)グランドホテル」(白木清司社長)が、山口地裁から破産開始決定を受け倒産。負債総額は約22億7,000万円。
4月1日には島根県益田市にある旅館経営の「(有)益田国際観光ホテル島田家」(設立1984年11月、資本金1,000万円)が、松江地方裁判所益田支部より破産手続の開始決定を受け倒産した。負債総額は約3億2,400万円。
その2週間後の昨日14日、山口県宇部市中央町にある料亭旅館「ホテル河長」(岡本和代社長)が山口地裁宇部支部に破産手続き開始を申し立てた。
ホテル河長は1928(昭和3)年に設立された老舗ホテルで最大収容人員は21名。結婚式場やレストラン、和洋食料理、仕出しも併営していたが、バブル崩壊による景気低迷や建物の老朽化によって近年客足が減少し、業績は悪化の一途をたどっていた。
人口減少による影響や付近に低料金のビジネスホテルの進出を受け、厳しい競争のため資金繰りが悪化したもので、創業150年の白木屋グランドホテル、170年の島田家と同様に、宇部の老舗ホテルが86年続いた歴史に幕を閉じた。
この事態を受けて女将の岡本社長は、予約客や同ホテルを常設会場としていた宇部西ロータリークラブ・法人会などの各種団体や地元企業宛に、「これまで 経費削減、個人資産の運用などで経営再建努力を行なって参りましたが、この様な結果になり誠に申し訳ありません。またご予約を頂いていたお客さまには一方的な予約のキャンセルをお許し下さい」と、長年の愛顧への感謝を記した文書を流した。
かつて宇部市は石炭の町として繁栄。戦後は化学メーカーに衣替えした宇部興産の城下町として一層の飛躍を遂げ、95年には人口18万2,771人で山口県第2位の都市であったが、長引く不況の影響を受け今年3月1日現在の人口は17万950人と年々減少しており、県庁のある山口市(19万5,118人)に抜かれ、今年中に17万人を切ると見られている。因みに第1位は下関市の27万2,371人。山口県の総人口も141万5,000人と年々減少し、150万人を突破した福岡市に大きく差をつけられており、人口の減少が地域経済に与える影響が大きいことが読み取れる。
アベノミクスの好景気に沸いているのはごく一部の業種であって、全国津々浦々の企業に浸透しているわけではなく、更に新たに導入された消費増税の逆風もあり、今回の相次ぐホテルの倒産は山口県や島根県のみならず、今から観光シーズンを迎える九州各地に数多く点在する名門老舗ホテルにも、倒産の波が静かに忍び寄っていることを暗示しているのかもしれない。
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