<セキュリティに興味ある人がたくさんいる>
――「SECCON2013」には、全国から1,312人、509チームが参戦しました。地方大会を総括、エピソードがあれば教えて下さい。
竹迫良範氏(以下、竹迫) SECCON2013は、地方大会9会場(横浜、長野、福岡、香川、福島、札幌、富山、名古屋、大阪)と全国大会(東京電機大学)で行なわれました。さらに、今回大幅に参戦者が増えた理由の1つは、予選にオンライン枠をつくったことだと思います。今までは、それぞれの会場に出向く必要があったのですが、今回はインターネットにつながれば、どこにいても参戦できました。その結果、一挙に1,000人を大きく超えました。正直、日本の大会で、セキュリティに興味を持ってくれている人がこんなにもたくさんいたことに驚いています。
インターネットだけでやり取りを繰り返し、一度も会わずに、チームとして決勝に残り、全国大会の会場で初顔合わせというチームも珍しくありませんでした。
地方大会のエピソードですが、地方大会9会場に多くの関東のチームが参戦していました。地域の制限枠はつけておりませんでしたので、決勝出場権を得るまでは、自由に参加可能だったからです。もちろん、旅費、宿泊費は自己負担です。それほどまでに、このコンテストに魅力を感じていただき、嬉しく思いました。関東地方はIT技術者のレベルが高く、しかも出場枠が2つしかないので、最激戦区だったからです。
<地方大会派とオンライン派に分かれる傾向>
参戦者のレベルですが、学生も社会人も、見事に大きく2つに分かれました。問題の内容そのものが難しく感じられ、何から手をつけて良いかわからなかった層と、逆にスラスラと簡単に回答できた層です。全体的に、セキュリティ・キャンプの経験者を含めて学生のレベルが高かったように思います。
ただし、福島県で開催した東北大会では、ただ1人しか解けなかった問題があったのですが、それを見事に解いたのは、地元の社会人のチームの方でした。傾向ですが、地方大会の参戦者は学生の割合が多く、社会人の多くはオンライン参戦だったと思います。
会場では、時間制限は4時間ですが、オンラインの場合は回答時間が24時間ありました。もちろん、それだけ難しい問題が出題されるのですが、社会人の多くは、長く問題に取り組むことを好んだように感じました。
<学生チームが1位から3位を独占しました>
――全国大会(決勝戦)を総括、エピソードがあれば教えて下さい。
竹迫 決勝戦は東京電機大学に全国から20チーム、80名が集合、攻防戦形式のCTFが行なわれました。結果的に、社会人チームを押し退け、学生チームが1位から3位を独占しました。1位のチーム「0x0」は全国高専生の混合チームです。2位の「EpsilonDelta」は兵庫の灘高生とOB(京大生)のチーム、3位の「urandom」は筑波大学生のチームでした。4位と6位に社会人チームがランクインしています。
決勝戦は2日間で行なわれました。1日目には、各チームの戦績が拮抗していたのですが、結果的に1位と2位は大きな差(ダブルスコアに近い)がつきました。この勝因を左右したのは、主催者側が設けたルール「防御ポイント」です。決勝戦では、ハッキングしてサーバーに侵入した後、同じように問題を解いては侵入して来る他のチームの攻撃を排除しなければなりません。1位のチームはこの防御ポイントを見事に見破り、完全に防御、後からの侵入をまったく許しませんでした。その結果、加点を重ねることができました。
<日本のハッカーの潜在的能力はとても高い>
全体を通じての感想ですが、日本のチームは底力(ハッキングスキル)は充分にあります。しかし、いわゆる攻防戦(実際に攻撃したり、守ったりすること)には不慣れであることがわかりました。
大会では、「4時間で解いて下さい」とか「24時間で解いて下さい」というように時間制限を設けているのですが、その制限時間以内で解けるチームは少数でした。しかし、大会終了後、問題を持ち帰って、3日間ぐらい時間を与えてあげれば、充分解くことが可能な力を持っている人は多くいました。これは実際の演習を重ねさえすれば、より高いレベルに到達できることを意味します。
<プロフィール>
竹迫良範(たけさこ・よしのり)
SECCON実行委員長
広島市立大学在学中に日本語検索エンジンNamazu for Win32の開発に携わり、2005年よりサイボウズ・ラボ(株)に入社。Shibuya.pm2代目リーダー。SC 22/ECMAScript Ad HocにてISO/IEC 16262の国際標準化活動に従事し、2013年よりSC 22/C#, CLI, スクリプト系言語SG エキスパート。主な著書として『ECMA-262 Edition 5.1を読む』(秀和システム)等がある。受賞歴:2008年 Microsoft MVPアワード Developer Security、2013年 情報処理学会 山内奨励賞、CSS2013/MWS2013 CSS×2.0一等星。
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