<韓国の財政状況>
景気が悪化すると、各国政府は景気を刺激して景気を浮揚させるために、財政出動をすることになる。それと同時に、低所得層を保護するために、福祉の支出も増加することになる。
ところが、景気は循環するものなので、景気刺激によって景気が良くなったとしても、どうしてもまた不況は起こることになる。最近になってその頻度も多くなり、国の財政を圧迫しているケースも増えている。今回は、日本と韓国を中心に負債状況を見てみることにする。
韓国の負債総額は、2011年度の決算を基準にして420兆ウォン(約42兆円)、GDP対比34%の水準である。外国の事例と比較してみると、日本がGDP対比230%で負債比率が一番高く、金融危機を経験したアメリカは100%を超えている。ドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパの国々は、ほぼ80%を超えて100%に迫っている。財政危機に陥っていたギリシア、イタリアなどは、すでに負債比率がGDP対比100%を超えて150%近くなっている。このように、諸外国と比較してみたときに、韓国政府の財政状況はまだ健全であると言えるだろう。
もちろん、これは政府の負債だけの話であって、これに政府の負担になる可能性のある公共企業の負債(約460兆ウォン)を含めると数字は違ってくる。この公共企業の負債の相当額が政府の負担になると仮定しても、韓国の負債はまだ危険な領域には達していない状況である。
しかし、将来を楽観してばかりはいられない。それはなぜかと言うと、韓国の通貨は先進国のそれとは事情が違うからである。先進国の通貨は世界的に通用できる国際通貨で、外国でもそのまま流通が可能であるため、先進国の国債は外国人によって購入されている。端的な例として、アメリカの財政赤字が多額になって国債の発行額が莫大な金額になっても、米国の国債を購入したいという人は全世界に存在している。だが、最近韓国の国際的な地位が向上したとはいえ、韓国の通貨はそれとは全然ちがうのである。
それから、韓国の通貨であるウォンは、まだ国際化されていない。韓国経済が少しでも揺さぶられると、外国人は即刻保有していた韓国国債を投売りする可能性もある。
さらに韓国政府は、北朝鮮との統一費用のことも念頭に入れないといけない。その費用は少なく見積もっても200兆ウォン~300兆ウォンはかかるだろう。このような費用にも備えておく必要があるため、韓国政府にとっては財政のりしろが必要である。
それから、国家の債務で懸念される要因の1つは、スピードである。1997年度の韓国政府の国債債務は、GDP対比11%に過ぎなかった。しかし、アジア通貨危機を経て、IMT管理体制を経験した後、福祉の支出が増加し、07年度にはGDP対比30.7%まで増えていった。
幸い08年以降には3~4%の増加に止まっているが、金額的には毎年20兆ウォン~30兆ウォンずつ増えている。この推移で進むと、韓国の国家負債は2015年に500兆ウォン、国民1人当たり負債額1,000万ウォンになるに間違いない。家計負債も1,000兆ウォンを超えているので、合計すると国民1人当たりの負債額は3,000万ウォンを優に超えている。
負債は国家であろうが、企業であろうが、個人であろうが、一度勢いがつくと手に負えなくなる。すなわち、負債が負債を生む循環に入ってしまう。
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