クアラルンプール発北京行マレーシア航空機が消息を断ってから1カ月が経過した。日本では、報道そのものがほとんど無くなったが、乗客のほとんどが自国民である中国では、マレーシア機に関する報道や、これにまつわる番組が現在でも、毎日のように放送されている。中国中央電視台(CCTV)のニュース報道では「インド洋での捜索状況」が連日発信される一方、特別番組の枠では「乗客の家族」にスポットを当てたものも放送されている。
先日放送された特別番組では、北京市内のホテルで消息を待つ家族の「メンタルケア」をする医師にスポットが当てられた。飛行機が消息を断ち時間が経過する中での「家族の心理変化」、また、医師が「家族とどうコミュニケーションを取るのか」などがインタビュー形式で伝えられた。「今回の案件は、『消息が不明で、生存確率が極めて薄い』という稀なケース。死亡が確認されていれば、過去の事例に基づいて遺族の方と接するが、死亡とも言いきれない。しかし『生存の可能性がある』ということを言って希望を持たせるのも状況的に無理がある。我々としては何も言えないし、『家族の話に耳を傾ける』というのが基本姿勢となる」と、番組に出演した王健医師は話す。「マレーシア政府の会見は一つの転機となったが、物的根拠がない以上、家族は『飲み込めない』という人がほとんど」とも語った。「家族の方も心理状態が急激に上がったり下がったりした。『テロ』の可能性が浮上し『だったらどこかの国で生きているのでは』という期待感も浮かんだが、『レーダーがインド洋から拾われた』という発表によって急降下した。家族の『精神面でのケア』は余談を許さない」と説明した。
また、番組には夫が搭乗し、行方がわからなくなっている中国人女性も出演した。「政府が何を発表しようとも、何も出て来ていないので『夫が死んだ』とはまだ思えない。それはほとんどの家族が同じなのではないか。ただ、現実を受け入れざるを得ない時が来ている。子供のためにも、次の生活を考えないといけない」と話した。「ブラックボックスが早く回収されて欲しいですね?」という司会者の質問に対しては「ブラックボックス?それはあまり関係ないです。夫に関する何かが出てこない限りは私の考えは変わらないでしょう」と話した。
インド洋上では多国籍で結成された船隊が捜索活動を行なっている。日数や状況から鑑みて乗客・乗員の生存確率は絶望的と見られているが、一刻も早い「発見」が待たれる。
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