働くお父さんたちの隠れ家的存在として、20年続いているスナックがあるという情報を得て、小生は今回、中洲交番の裏の通りにあるオークビルの地下へ。二晩連続、ラストまで飲んで、その店の人気の理由を探った。店の名は「WANNA BE(ワナビー)」。同じフロアの他テナントが入れ替わるなか、20年続いている屋号。だが現在、お店を経営するのは33歳、花嫁修業中の鈴木未来(みく)ママ。底抜けに明るい鹿児島県出水市出身の〝薩摩おこじょ〟である。
未来ママで3代目という「WANNA BE」は、先代から広告宣伝一切ナシ。したがって、一見は年に1回来るか来ないか。常連の口コミで続いており、客層は40~50代が中心という。1人で飲みにきていた隣の紳士は関西からの出張客。尋ねてみると、福岡の取引先から紹介され、以後、こちらに来る時は必ず顔を出しているとか。「昭和な雰囲気にリラックスできて、ゆっくりお酒を楽しめる」と笑顔で語り、やしきたかじんの名曲を渋い歌声で披露してくれた。
営業時間中、常連から引っ張りダコの未来ママ。彼女が中洲デビューしたのは短大生19歳の時。はじめは週1程度のアルバイトだったが、その資質を見抜いたのは先代ママ。派遣会社からの最初の派遣先が「WANNA BE」だった未来ママに、「うちで働かないか」と声をかけた。意気投合し、翌日から働き始め、客が増えるにつれて出勤日数も増えていった。そして7年後、先代ママの強いプッシュと常連の支持があり、3代目ママとして屋号を継いだのである。
経営を始めるにあたって、3日3晩寝ずに悩んだという未来ママ。「雇われ」から立場が変われば、日々の不安は大きくなる。「自分でやり始めると、それまで以上にお客への感謝の気持ちが大きくなりました」と振り返る。愛嬌タップリの未来ママは、お客以外のファンも多く、酒屋、居酒屋、バーなどからも紹介を受けてきた。転勤族も福岡に戻ってくれば常連に復帰。小生と居合わせた他の客は、中洲まつりのイベントで訪れ、常連になったと馴れ初めを語った。
では、一見さんはどうやってこの店を知るのだろうか。尋ねてみると、「たしか5、6年前に来られた方は、迷彩ズボンの黒Tシャツ姿で軍人と名乗って、『イラン帰りで持ち合わせがないからツケがきくか?』と。さすがに丁重にお断りしました(笑)」とのこと。そもそも彼が一見と呼べるかは疑問であるが、「WANNA BE」がほぼ100%常連でもっていると感じさせるエピソードとも言える。
値段も良心的。飲み放題は90分6,000円だが、ボトルキープならセット5,000円。ボトルも焼酎は5,000円から、洋酒は6,000円からとなっており、ファンの多い「三岳」でも6,000円。たらふく飲んで歌っても1万円ぐらいでいける内容だ。
未来ママと、心優しい気配りでこれまたファンの多い同い年の5年来のスタッフ・なおさん、そして常連客の3人4脚で切り盛りしている「WANNA BE」。都会の喧騒に疲れた時は、どこかゆっくりと時が流れているような同店で、中洲の夜を過ごしてみてはいかがだろうか。
<SHOP INFOMATION>
WANNA BE(ワナビー)
住所:福岡市博多区中洲3-1-8 オークビル地下1階(地図)
TEL:092-262-1270
営業:午後8時~(日祝休み)
料金:5,000円~(キープ有)、飲み放題90分6,000円
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