NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。
4月18日のブログでは、メディアが既得権益を擁護する報道を行ない、重要な政策が国民を蚊帳の外においたまま実施されようとしている現状について指摘している。
本質的に重要なテーマが陰に隠れ、その場限りのゴシップニュースに目が奪われる。本質的なテーマに人々の目が向かうことを回避したい勢力にとって、この種のゴシップニュースは恰好の隠れ蓑になる。
2009年8月30日の決戦の総選挙。主権者勢力が既得権勢力に勝利を収め、政権交代の大業が成就した。しかし、選挙直前の情報空間を占拠したのは酒井法子の麻薬問題だった。
2010年7月11日の参院選。民主党がこの選挙に勝利すれば、「ねじれ」が解消した。日本は新しい時代に移行したはずである。しかし、メディアは「ねじれの解消の重要性」など、ひとかけらも報道しなかった。小鳩政権からクーデターによって権力を強奪した菅直人氏は、突然、消費税増税を公約に掲げた。主権者が菅直人政権に罵声を浴びせたのは当然のことである。菅直人政権は参院選に大敗して、日本政治刷新の偉業を台無しにした。「無血の平成維新」が無に帰すことになる原因を作った第一の戦犯は菅直人氏である。
メディアは菅直人氏の消費税増税公約を大きく取り上げて、民主党敗北を誘導した。民主党は「シロアリ退治なき消費税増税はおかしい」ことを訴えて2009年総選挙を戦った。
その民主党が2012年8月に消費税増税の法律を成立させた。主導者は野田佳彦氏である。
「無血の平成維新」が無に帰すことになる原因を作った第二の戦犯は野田佳彦氏である。
菅直人氏と野田佳彦氏の主権者に対する背信行為は万死に値するものである。主権者国民との公約を破棄して、消費税増税の法律を成立させた野田佳彦民主党は、主権者に対する特別背任で訴追されるべき存在だった。しかし、メディアはこの問題をまったく取り上げなかった。
既得権益勢力は主権者勢力からの権力奪還に総力を挙げた。2012年12月総選挙に際して、まずは、消費税増税の是非が徹底的に論じられる必要があった。シカシ、NHKは一度もまともにこの問題の是非を徹底的に論じる姿勢を示さなかった。NHKは消費税増税関連法成立によって、消費税増税を既成事実化することに注力したのである。
2012年12月の総選挙では、原発・消費税・TPPが三大争点であるべきだったが、メディアはこの重大争点を明示することを阻止した。メディアが取り上げたのは、「アベノミクス」と「第三極」であった。民主党政権をこのまま存続させるのか、それとも政権を刷新するのか。これが問われる選挙だと喧伝された。
そして、国民の関心事は「景気・雇用」だという宣伝が流布され、アベノミクス支援の世論が創作された。さらに、現有議席が合計10でしかなかった「維新・みんな・太陽」を「第三極」としてはやし立てた。
自民・民主に次ぐ第三勢力が「未来=生活」であったにもかかわらず、メディアは議席10の「維新・みんな・太陽」を大宣伝したのである。
突然、PM2.5が報道番組を占拠し始めたのもこのころである。メディアの誘導によって、安倍自民が大勝し、メディアが大宣伝した「第三極」が多数議席を確保した。すべては、既得権勢力の「誘導」、「工作」によってもたらされた結果である。
2013年7月参院選では、原発・消費税・TPPに加えて憲法・沖縄が論じられる必要があったが、メディアが前面に掲げた争点は、「ねじれの解消」と「アベノミクスの評価」だった。安倍自民党を勝利させるための情報工作であったことは間違いない。
いま、私たちの目の前には、原発・TPP・憲法と言う、重大問題が横たわっている。
オバマ大統領が来日するからといって、日本国民の利益を損なうTPPについて、勝手に大筋合意など掲げられてはたまらない。原発再稼働をなし崩しで強行されてはたまらない。
テレビも週刊誌も小保方騒動で盛り上がるが、巨額の税金が公的研究機関にばら撒かれることが問題なのであって、小保方バッシング・小保方擁護などは、井戸端談義の域を出るものでない。
こんなテーマに関心が引き寄せられる間に、TPPや原発、集団的自衛権などが独断専行で推進されることが問題なのである。
2009年秋の政権交代の大業成就から4年半の時間が経過した。この間に大震災・大津波・原発事故もあった。まさに激動の4年半なのだが、結局のところ、主権者のための政治が、既得権益のための政治に引き戻された4年半であった。
既得権益とは、「米・官・業・政・電」のことだ。別名「悪徳ペンタゴン」である。
既得権益の政治を主権者の政治に刷新しようとしたのが、小沢-鳩山民主党である。
※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第841号「2014年最大の政治戦場は沖縄・福島県知事選」で。
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