<もう1つの日本一「滞在時間」へ>
『あべのハルカス』には、ビルの高さ日本一(300m)のほかに、もう1つの日本一を目指す。それはあべのハルカス近鉄本店が掲げる「滞在時間の日本一」だ。この目標が、単なる商業施設とは異なる『あべのハルカス』に変貌させ、阿倍野地区全体の活性化へつながっている。
近畿日本鉄道(株)(以下近鉄)によると、「先進的な都市機能を集積した立体都市」として、建物のなかが街としての機能を果たすという。その事業構築において、以下の4つの柱を掲げている。
(1)流通機能は、あべのハルカス近鉄本店(地下2~14階)、(あべのハルカス美術館(16階)、ハルカス300展望台(58~60階))である。展望台からは、美術館、大阪平野、紀伊半島、淡路島など近畿一円を見渡せる。
(2)ホテルは、客室数360室の大阪マリオット都ホテル(19、20階、38~55階、57階)を擁する。国際ブランドのホテルとして名高いマリオットと、日本有数のホテルである都ホテルのサービスを融合させた。
(3)不動産機能として、オフィス用途での賃貸(17、18階、21~36階)は、オフィス用面積約40,000m2を持つ。
(4)鉄道としては、1階および地下1階に近鉄南大阪線大阪阿部野橋駅。
<「新しい生活文化」を発信する「暮らしのランドマーク」>
代表的な事業の1つである百貨店は、メインのタワー館5万7,000m2、ウイング館4万3,000m2の合計10万m2と商業施設として日本最大の面積をほこる。(旧近鉄百貨店阿倍野店は6万7,811m2)。タワー館は、13年6月11日に先行オープンし、この一大プロジェクトの先陣を切った。
筆者が知る近鉄百貨店は、「あべきん」と呼ばれ、良い意味で庶民的な百貨店のイメージがあったが、「あべのハルカス近鉄本店」は、そのイメージを180度変えた。「あべきん」は、おじいさん・おばあさんが孫を連れて買い物に来て屋上の遊技場で過ごすという姿がよく見られていたが、今では、すべての年齢層の女性、ビジネスマンそして家族連れでの来客の割合が大幅に増えた。
以前よりもマーチャンダイジングが進化し、加えて買物以外のニーズに応えるため、くつろぎや憩いの空間として、人々が集う広場やカフェ、サロンなどを充実させている。「あべのハルカス近鉄本店」は、すべての人々がいつも楽しめ、それぞれの暮らしが充実する「新しい生活文化」を発信する拠点としての価値創造を目指している。
「あべきん」は、百貨店が展望台、ホテル、最先端の設備を採用したオフィス、近鉄沿線のターミナルと一体となったことで、『あべのハルカス』は、買い物、飲食、宿泊、観光、通勤経路、仕事場、学びの場などを備えて「暮らしのランドマーク」に生まれ変わった。近鉄および近鉄百貨店が掲げる「新しい生活文化」への挑戦は、「来られたお客様に1分でも長く滞在していただき、より高い満足を提供する」ことにつながっている。
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