西日本シティ銀行は、谷川浩道副頭取(60)が頭取に昇格する人事を固めた。6月の株主総会後に開催される取締役会の選任を受けて正式に就任する。8年間トップの座に君臨した久保田勇夫頭取(71)は会長に就く見通し。谷川氏は財務省(旧大蔵省)出身で、同行の頭取は、新藤恒男氏、久保田氏と三代続けての"天下り"となる。
谷川氏は2011年5月に同行顧問として入行。翌月に取締役専務執行役員に就任しており、久保田氏の後継者として本命視されていた。
同行は04年10月、西日本銀行が経営状態の厳しい福岡シティ銀行を救済合併して誕生した。その2年後の06年6月に久保田氏は頭取に就任し、旧2行のシステム統合や店舗整理を進めてきた。その後財務基盤の強化によって10年7月には、旧福岡シティ銀行に注入されていた公的資金700億円の返済を完了。同年には九州の地銀で初となる証券子会社「西日本シティTT証券」の設立や、住宅ローン相談窓口の拡充などリテール部門を強化して、攻勢に転じている。
九州には18行の地方銀行がある。人口の減少や地域経済の縮小により地銀の経営環境は厳しさを増しており、全国的に見ても金融再編が一番遅れていると見られている。
金融庁の畑中龍太郎長官は1月15日に全国地方銀行協会、翌16日には第二地方銀行協会の会合に出席。居並ぶトップらに向かって「経営統合を経営課題として考えていただきたい」と表明。金融当局として業界再編の検討を求める異例の要請を行なったことが明らかになっている。
地方銀行と金融庁は毎月意見交換会を行なっているが、年初の畑中長官の「爆弾発言」に、出席したトップは、いつにない緊張感に包まれたという。複数の地銀関係者によれば、長官は「じり貧の経営から抜け出すために経営トップとして打つべき手を打て」と、ドスを利かせた声音で伝えたといい、思わず息を呑んだ頭取も少なくなかったといわれている。
福岡を中心に福岡・熊本・親和の3銀行を傘下に置く「ふくおかフィナンシャルグループ」と、西日本シティ銀行グループ(子会社の長崎銀行)がしのぎを削っている。また、11年10月に北九州銀行(山口FGグループ)が新設されており、その競争は一段と厳しくなると予想されている。九州の地銀が今後生き残るには金融再編の道を歩むしかないとの見方が有力だ。
谷川浩道氏は畑中金融庁長官と1976年に大蔵省に入省した同期であり、新頭取の誕生によって、九州の金融再編は県境を越えて一気に進むのではないかとの憶測を呼んでいる。
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