異国文化や情勢を知るための有効な手段として「映画を見る」という方法が挙げられる。日本では「韓流ドラマ」も多く放送されているが、映画には歴史的背景や伝統的な文化、風俗が色濃く反映されていることが多い。
「韓国を知る」ためにどのような映画を見れば良いのだろうか・・・。韓国でヒットした作品、あるいは、韓国人有識者が推薦する名作映画をご紹介する。ピックアップする作品は日本の大手レンタルDVDストアでも入手可能だ。
■王になった男(監督チュ・チャンミン)
日本でもおなじみイ・ビョンホン氏が、「朝鮮王朝15代王・光海」と、その「影武者」ハソンの二役を演じた時代劇映画だ。王と瓜二つだったために毒殺の危機に怯える王・光海の影武者を務めることになったハソン。偽物の王が、本物の王に成り済まして政治の現場へと足を踏み入れる15日間を描いたストーリーで、硬派なイメージの強いイ・ビョンホン氏が、この作品ではコメディタッチの演技も見せ、役者としての奥の深さも見せる。
韓国の李氏朝鮮時代は1392年から、日本に併合される1910年まで続いた朝鮮半島最後の王朝だ。そのなかで作品のモデルとなった光海君は1608年に王位についた。即位すると財政の再建と、現実的な外交施策を展開。江戸時代の日本とは1609年に和約し、関係を築き上げた。1623年に廃位するまで、当時新しい税制である「大同法」を採用するなど斬新な手腕が功績として挙げられている。韓国人通訳者は「光海君は韓国の歴史教科書では『中国と日本のパワーをバランス良く利用して朝鮮の安定を築きあげた』という功績者として記されている。非常に有名な王で、韓国のテレビドラマのモデルにもなっている」と説明する。
作品の最後に字幕スーパーで「5年後、光海君は廃位される。光海は土地を持つ者だけに課税し、民を救うため『明』と対峙した唯一の朝鮮の王である」と記されている。作品は1616年が舞台となっているが「朝鮮を守るために尽力した『王』」としてヒーロー視されている「光海君」の存在を知ることができる。前述の韓国人通訳者は「映画は『民のための政治とは何か』を訴えたものでもある。韓国でも政治家への不信感は高まっており、本作の観賞を通じ、多くの国民は『政治の為の政治』ではなく『民の為の政治をして欲しい』と政治家たちに願った」と指摘する。
韓国では1,200万人を超える観客動員で、韓国のアカデミー賞「大鐘賞」で15部門を受賞。史実に「影武者」の存在というフィクションを織り交ぜたものだが、朝鮮王朝の宮廷の雰囲気を存分に味わうことができるだろう。
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