NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、国民から強制的にNHKの放送受信料を徴収することは財産権の侵害に当たるとして、「受信料支払い凍結運動」への参加を呼びかけた4月21日付の記事を紹介する。
「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が4月17日、NHK会長の籾井勝人氏が4月中に自ら辞任しない場合、受信料を今後半年間支払わないよう視聴者に呼びかける運動を始める、と発表した。
4月2日付の本ブログ・メルマガ記事「情報先進県沖縄のNHK受信料支払率は5割未満」、「『あべさまのNHK』に『みなさまの受信料』は不要」に記述したように、NHKの放送受信料を支払っていない世帯は数多く存在する。
日本で唯一の情報先進県と言ってよい沖縄県の受信料支払い率は45%を下回っている。現状はNHKが公表しているデータによって確認できる。こちらのデータだ。
NHK放送受信料の・都道府県別推計世帯支払率(平成24年度末)
最低値が沖縄の44.3%。第2位は大阪の58.0%。関西圏は数値の低い府県が多い。京都68.2%、兵庫68.5%、奈良73.8%、滋賀74.4%。そのほか、東京61.6% 北海道64.5%で、全国平均は73.4%である。最高値は秋田県の95.7%である。
放送法は家にテレビを設置するとNHK放送受信料を支払うことを定めているが、この法律条文は日本国憲法に反する疑いが濃厚である。
放送法の条文がこちら
(受信契約及び受信料)
第64条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
日本国憲法には次の条文が置かれている。
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
国民から強制的にNHK放送受信料を徴収するなら、これは、放送受信料ではなく税である。税には強制力がある。国民がNHKの放送に賛同せず、受信料の支払う意思を持たないのに、この国民から放送受信料を強制的に徴収することは財産権の侵害に当たると考えられるのである。
放送法は放送の不偏不党、政治的公平を定めている。
(目的)
第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
二 政治的に公平であること。
そして、NHKについて定める放送法は、NHKの経営委員について、次の定めを置いている。
(委員の任命)
第31条 委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。
民主党の小西洋之議員が国会で厳しく追及したように、安倍政権の経営委員選定に関する人事は、放送法第31条に反するものである。このことは、昨年11月1日の本ブログ・メルマガ記事「安倍政権NHK経営委員人事案は放送法31条違反」、「NHK私物化の実態と放送法抜本改正の必要性」をはじめとする論考で指摘してきたことである。
NHKの放送受信料徴収が日本国憲法の保障する財産権を侵害しないようにするための方策は明確であり、直ちに実施することができる。NHK放送をスクランブル化すればよいのである。NHK放送を有料で視聴したい世帯は受信契約を結び、NHKはスクランブルをかけたNHK放送について、受信料支払い世帯に対して、スクランブルを解除すればよいのである。このような技術が確立されている以上、この技術を利用しないことを正当化する主張は正当性を失う。
沖縄県には権力に迎合しない健全なジャーナリズムが確立されている。そのために、民主主義が健全に機能しているのである。この情報先進県でNHK放送受信料支払い率が45%を下回っていることは特筆に値する。
東京大学名誉教授である醍醐聰氏などが中心になって活動している「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が提唱する「籾井勝人氏のNHK会長辞任を求める受信料支払い凍結運動」に、より多くの市民が参加することが求められている。
なお、本日、4月21日午後8時より、UIチャンネルで、鳩山友紀夫元首相との対談「主権者が日本を取り戻す」が生放送される。ぜひご高覧賜りたい。
※続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第842号「現行NHKは「戦後非民主化」の落とし子である」で。
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