<組合員ニーズを活かすコーポラティブハウス事業>
分譲マンションの供給量では、地場上位を誇るあなぶき興産九州(株)。その強さは地域に根ざした優れた営業力によるものだが、2012年10月に就任した土居年典社長のもと、事業をマンション販売以外にも拡げ、新しい柱を育てようとしている。
その1つが福岡市中央区平尾で計画中の「コーポラティブハウス」だ。これは入居者が自分の住戸を自由設計しながら、組合をつくって建てる集合共同住宅を指す。通常の分譲マンションとは異なり、モデルルームはないが、その分割安に住まいを取得することができる。また、専任の設計士とコーディネーターと一緒に住まいを創り上げていく。
「組合員さんとお話することで、マンションとは違ったご意見がうかがえます。ビジネスライクで考えるのではなく、これからの事業に活かしていこうということです。デベロッパーの立場では、採算を度外視しても挑戦していこうと思います」と土居社長。
コーポラティブハウスは価格帯が広く、計画に入居者の意見が反映される。音楽好きなら防音仕様も可能だ。住宅購入希望者にとってそれだけ選択肢が広がるのである。東京ではカタカナ系職業の人々などには認知度が高く、山手線からそう離れなくても割安で購入できるところが人気という。
立地は一本木交差点から平尾山荘通に抜ける途中で、建物は小高い丘に南斜で建つ抜群のロケーションだ。募集戸数は23戸で、竣工は2015年の夏を予定している。
場所柄、高級住宅地のイメージがあるが、福岡ではコーポラティブハウス自体が珍しいため、購入希望者が十分に認識していない。そのため、ホームページやチラシで、時間をかけてアピールしていくという。
土居社長は「将来的にはつくって売るだけでなく、受注型のマンションに参加する試金石にしたい」と意気込む。
<シニア関連事業は長期的なストックビジネスと考える>
もう1つは「住宅型有料老人ホーム」である。シニア開発事業の一環として、開発を進めているものだ。昨年11月と今年3月には、鹿児島地区に「アルファリビング」2棟が完成した。
こちらはオーナー建て貸しで、同社が定額で一括借り上げし、期間25年でオペレーションする。築年数が増えるにつれて空室率が高くなる賃貸マンションに比べると、安定した利回りを地主さまに提供できると考えられる。
「管理会社と同じで、戸数が増えないと収益は上がりませんし、入居者に対する細かな気遣いも必要です。ただ、長期的なスパンで考えるとノウハウが蓄積できますし、20~30年のストックビジネスとして考えています。マンション分譲と同様に入居者を待ちの姿勢で迎えるのではなく、モデルルームを先につくって現役世代から前倒しで募集し、早期に満床させることがカギになると思います」(土居社長)。
アルファリビングの上之園、東千石は、ともに鹿児島市内の中心部に位置する。有料老人ホームといっても、要介護1くらいまでのお年寄りは、活動的で都市部を好むというニーズに添ったものだ。
グループ内には「あなぶきメディカルケア」があり、ケアマネージャーや介護士といったスタッフ態勢も万全。ストックビジネスという新しい柱が立ち、経営基盤はより強固なものになりそうである。
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<ワンポイントPR>
分譲マンションからコーポラティブハウス、住宅型有料老人ホームにも商品を拡げる。販売のみのフロービジネスオンリーではなく、投資型やリノベーションといったストックビジネスも事業の柱に育てる。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:土居 年典
所在地:福岡市博多区御供所町2-63 あなぶき博多ビル
設 立:2007年2月
資本金:3億5,000万円
TEL:092-292-4420
URL:http://www.anabuki-k.co.jp/
<PROFILE>
土居 年典(どい・としのり)
1951年5月、香川県生まれ。大学卒業後、74年に(株)穴吹工務店に入社。執行役員不動産ソリューション事業部長、取締役、常務取締役などを歴任し、2007年6月に同社を退社。 東京ではリノベーションや投資用マンションに携わった経験から12年10月、あなぶき興産九州(株)の社長に就任。
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