<迎え撃つ「キタ・ミナミ」も活況>
『あべのハルカス』グランドオープンで脚光を浴びる阿倍野地区に対し、大阪の代名詞と言える『キタ・ミナミ』の現況は、どうか。実は、客を奪われるどころか、どこからお客が集まってくるのか不思議なほど、『キタ・ミナミ』も活況なのだ。
『キタ』の梅田地区の中心にある梅田駅は、阪急・阪神・大阪市営地下鉄(御堂筋線、谷町線、四ツ橋線)が乗り入れている大阪最大のターミナル駅だ。近隣の大阪駅にもJR環状線、東海道線をはじめとしたJR各線が乗り入れており、同JRあわせて鉄道の要所となっている。梅田の各駅および大阪駅の1日の乗客数は、合計約177万8,000人とされ、西日本最大級のターミナルであり、日本有数のオフィス街、そして商業地区である。
『キタ』には、代表的な北新地をはじめとする歓楽街があり、多数の飲食店が大小問わず軒をつらねている。梅田および近隣の堂島地区界隈には、日本有数の企業とともに、中小企業のオフィスも数多く存在する。
交通の要所であるため、世界チェーンのホテルをはじめとして、宿泊施設も大阪のなかでは群を抜く。
そして、商業施設の集積地でもある。老舗百貨店の阪急、阪神。その後大丸の出店、近年のJR大阪三越伊勢丹の進出と百貨店間での競争が激化し、今日に至る。
<オーバーストアと言われる現況>
エイチ・ツー・オー リテイリング(株)(以下エイチ社)の阪急うめだ本店と阪神梅田本店(阪急メンズ大阪含む)の14年3月期第3四半期の売上高は1,987億8,500万円で、梅田エリアで前年比118.6%となっている。特に、阪急うめだ本店は、12年11月のグランドオープンから1年が経過したなか、活況が続いている。グランドオープン後の各月の売上高は、前年同月比140~160%で推移している。阪急の強みである食料品と婦人服のマーチャンダイジング戦略を精密化し強化した店舗づくりと運営実践に加え、紳士服の充実をはかり、顧客ターゲットを拡張させている。何よりもゆっくりできる売場スペースの創造により、売場全体がよりわかりやすくなっていたのが印象的であった。
やや苦戦ぎみの阪神梅田本店は、21年秋グランドオープンする建て替え工事計画の決定を発表している。一方で阪急うめだ本店単体の14年3月期の売上計画がグランドオープン当初2,130億円とされていたが、直近では1,880億円に下方修正されている。
<大阪復活の行動力がある>
業界関係者やコンサルタント、経済評論家は、梅田地区はオーバーストアで、特に百貨店は苦戦が続くと評している。
確かに梅田地区には、家電量販店大手のヨドバシカメラ梅田店、複合型商業施設のグランフロント大阪、大丸梅田店、三越伊勢丹と隣接するルクア、阪急系列のHEPと大型店舗がズラリと並ぶ。ヨドバシカメラ梅田店は、同社の店舗でトップクラスの規模で、売上高は約1,000億円とされる。
今後、梅田地区の商戦は、一層厳しさを増して閑古鳥が鳴く店舗が出るとも言われている。その様を「沈没」という言葉で例える専門家もいる。
しかし果たしてそうだろうか。人口減少と言われて久しい大阪市であるが、それでも268万人。平日でも相応の人々が往来する。これは『ミナミ』の難波・心斎橋地区でも同様で、同地区のシンボルである戎橋・心斎橋筋の商店街は、店舗の入れ替えは変わっても、活気はひと昔と同じである。その賑わいが、それぞれの店舗の売上・経営に結びついているかは、店舗ごとに違いがあるだろうが、沈没という状況にはない。
「大阪経済の沈没、大阪経済の斜陽、大阪経済の衰退」「大阪の繁栄はない」と断言する専門家は多い。だが、何とか復活しようとする行動力は大阪にはある。
※記事へのご意見はこちら