<さーミラノへ行くか>
(株)リッツウェルの宮本社長とは、お互いサラリーマン時代にビジネス人生談義を行なった仲である。同氏は筆者よりも1年先に会社を設立させた。1年に1度、会食をしながら経営論議を行なってきた。近年はあまり情報交換の場を失っていたので、近況を的確につかんでいなかった。
昨年2月のことだ。ある設計士が「リッツウェルの宮本さんのところが、ミラノでの家具展示会に自社で単独ブースを出す。その場づくりに飛ばなくてはならない」と語ってくれた。このことを耳にしたときに「宮本氏の晴れ舞台に立ち会わなければならないが、4月とはあまりにも時間がない。今年は諦めて、来年にしよう」と心の中で決めた。
ちょっと調べてみた。イタリア第2の都市・ミラノで開催される世界家具の展示会「ミラノサローネ(ミラノ国際家具見本市)」は、世界でダントツのものである。厳密に言えば、デザイン優先の家具分野では「家具オリンピック」と言われている。世界のデザイン家具の強豪たちが出品して、ビッグビジネスの成約を成し遂げるそうだ。日本のメーカーで単独出品するのは、2ケタに到達していない。その領域に、弱者・リッツウェルの宮本社長が果敢に挑むのである。すごい度胸だ。
もともと、椅子に拘りイタリアで家具を製造して日本に持ち込んできた。あとで紹介するが、息子さんをミラノ近くにある家具メーカーへ、職人としての技術習得のために2年近く派遣していた。その椅子の本家家具のイタリア、ヨーロッパへ殴り込みをかけようとしているのだ。
この闘争心は見上げたものだ。宮本社長に「2014年も出店する」と確認していたので、この1年間、用意万端、準備をしていた。そして4月9日にミラノに向かった。
<ミラノ地区がイタリア経済を支える>
ミラノに行くのは、これが3度目である。しかし、過去の2度は一泊はしたが、素通りをしたようなものだ。町並みは清閑な感じで、重厚な時代感が漂っていた記憶が残っている。今回は、自前で視察旅行の段取りを行なった。一番の近道は、羽田=フランクフルト=ミラノ・マルペンサ国際空港である。ルフトハンザ航空でフランクフルトまで、行きは12時間、1時間50分待って、ミラノ・マルペンサ空港には1時間半で到達する。羽田から15時間を要するということだ。マルペンサ国際空港は24時間運航を行なっているが、海外客の利用者数は年間1,800万人内外ということだ。福岡国際空港の利用者が250万人であるから、7倍の規模と言える。
ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどのイタリアの中核都市の経営は、歴史遺産=観光産業で成り立っている。極端な表現をすれば、ローマ帝国、ルネッサンスの歴史的財産による観光サービス業の繁栄で、オマンマが食えているのだ。ところが、ミラノは違う。ミラノも、上記した3都市に負けないくらいの歴史的遺産を持っている。だから、ヨーロッパ、世界から凄い数の観光客が訪れる。違うところは、モノづくりの産業蓄積をケタ外れに有していることだ。
家具産業がその一例である。ミラノを中心に、家具製造会社が林立している。この地区で製造された莫大な家具類は、世界中で流通されるのだ。また、『ファッション・デザインの世界最先端の発信』を誇りにしているが、これらの関連産業の集積も捨てたものではない。さらに、ミラノ郊外は肥沃で農業も盛んである。このような風土を背景にして、ミラノ人たちはよく働きよく稼ぐ。ミラノが州都であるロンバルディア州が、イタリアでは一番、豊かなのではないか――。
ミラノ・マルペンサ国際空港近くのヒルトンホテルに滞在したが、周囲を見渡して、戸建ての邸宅に一般市民が暮らしている光景を目撃するにつけても、たしかに余裕感がうかがえる。裏を返すと、イタリア国家への税金上納のトップゾーンである。だからミラノを中心としたロンバルディア州では「我々が収めた国税の無駄を許さない」という運動が高まっているそうだ。極端な潮流では、「イタリアからの独立」を叫んでいるとか。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮本 敏明
所在地:福岡市博多区板付5-2-9(福岡本社)
東京都港区南青山2-13-7(東京ショールーム)
大阪市中央区南船場4-7-6(大阪ショールーム)
設 立:1992年5月
資本金:2,000万円
TEL:092-584-2240(本社)
03-5772-3460(東京ショールーム)
06-4963-8777(大阪ショールーム)
URL:http://ritzwell.com/
<PRESIDENT PROFILE>
宮本 敏明(みやもと・としあき)
1945年福岡市生まれ。北九州大学卒業後、地場家具業界で経験を積み、イスの魅力にとりつかれて、92年5月(株)リッツウェルを創業。
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