みずほ銀行がグループ企業の信販会社オリエントコーポレーション(オリコ)を窓口として暴力団関係者らへの融資を放置していた問題で、昨年9月27日、金融庁が業務改善命令を発令。大手銀行の不祥事として社会問題化し、佐藤康博みずほ銀行頭取(兼みずほフィナンシャルグループ(FG)社長(61歳)は11月13日、衆院財務金融委員会に参考人招致を受けている。
2度目の業務改善計画提出した今年1月17日、佐藤頭取は記者会見で「新たな体制づくりやグループ戦略を練る役割に専念する。再発防止に向けて、6月には委員会設置会社に移行し、社外取締役が人事などを主導するかたちにする。そのために3月末までにグループの役員の人事体制を整える」と続投を表明。だが、続投を示唆する発言が世間の批判を浴び、1週間も経たない23日に再度記者会見を行ない、「みずほFG社長に専念するため、兼務するみずほ銀行頭取を4月1日付で辞任し代表権のない取締役に退く。後任に林信秀副頭取(56歳)が昇格する」と発表した。
わずか1週間も経たずに佐藤社長が頭取辞任を決意した背景には、「金融当局(金融庁は麻生太郎副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣が管掌)の無言の圧力があった」のではとの見方が広がっている。メガバンクといえども金融機関を監督する金融庁の一挙手一投足に敏感に反応せざるを得ない状況にある。
そのため、みずほFGは安倍政権に擦り寄る態度を見せたのだ。
安倍総理が掲げるベアによる景気回復の掛け声に、自動車や電機などの主要産業界は、3月12日までにベアを実施すると回答。金融界では、証券業界はベアを受け入れていたが、銀行業界は慎重だった。そこで、金融庁の厳しい監督下にあるみずほ銀行は、「ベアを受け入れれば免罪符」とのシグナルを受け取ったかのように、翌13日、メガバンクでは初めて、19年ぶりに労組が要求する0.5%のベアとボーナス5%の増額を「満額回答」で受け入れる方針を表明した。金融庁は日本経済再生を掲げる安倍内閣の外局であり、みずほ銀行は銀行業界で「いの一番」にベア要請に応じ、金融当局に免罪を求めたと見られている。
金融庁長官のポストは、これまで2年で退任するケースが慣例となりつつあったが、一昨年12月に発足した安倍政権は、昨年6月に丸2年を迎えた畑中龍太郎金融庁長官の続投を認めた。異例の長期政権を担う畑中長官の発言は、金融機関に大きな影響力を与えることになる。
畑中長官は今年1月15日に全国地方銀行協会、翌16日には第二地方銀行協会の会合に出席。居並ぶ頭取に向かって、「経営統合を経営課題として考えていただきたい」と表明。金融当局として、業界再編の検討を求める異例の要請を行なったことが明らかになった。
金融庁は地方銀行と毎月意見交換会を行なっているが、年初の畑中長官の「爆弾発言」に、出席したトップは、いつにない緊張感に包まれたという。複数の地銀関係者によれば、長官は「ジリ貧の経営から抜け出すために、経営トップとして打つべき手を打て」と、ドスを利かせた声音で伝えたといい、思わず息を呑んだ頭取も少なくなかったと言われている。
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