<地銀の対応について>
その発言に、さっそく反応したのは地方銀行だった。
畑中長官の発言を受けた2週間後の1月28日、地銀協会長行の福岡銀行を始めとする北海道から九州の有力地銀9行が、全国規模で情報交換し、各行が個別に融資する地元企業に対し、互いに遠隔地にある新たな取引先を紹介したり、企業の合併・買収(M&A)を支援したりする業務提携を結んだと発表した。連合体の名称は「地域再生・活性化ネットワーク」。
提携する9地銀を地域別で見ると 北海道は北海道銀行(札幌市)、東北は七十七銀行(仙台市)、関東・甲信越は千葉銀行(千葉市)、八十二銀行(長野市)、静岡銀行(静岡市)の三行、近畿は京都銀行(京都市)、中国は広島銀行(広島市)、四国は伊予銀行(松山市)、九州は福岡銀行(福岡市)で、いずれも各地域のトップバンクである。
昨年3月には北海道銀行と七十七銀行など東北地域の10行が、互いに取引先中小企業を紹介することで提携するなど、近隣の地銀同士が情報交換などで連携する例はあったが、今回のように全国規模で有力地銀9行が連携するのは初めてのケースとなる。
この大型提携によって、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行などのメガバンクに対抗し、各行が保有するきめ細かな地域情報を持ち寄り、全国規模で連携して地域経済の再生と活性化を図ることができる。これまで個別行では広域におよぶ対応が難しく、大手行に奪われていた数十億~100億円規模の融資案件も引き受けることが可能となる。
しかし、地銀の主力9行が「地域再生・活性化ネットワーク」を組成した本当の狙いは、畑中金融庁長官が発言した「経営統合を経営課題として考えていただきたい」と述べたことを受け、今後金融庁主導で進められる金融再編の「主導権」を握るために手を挙げたとの見方が有力だ。
次の表を見ていただきたい。
上記の表でおわかりのように、北海道銀行と北陸銀行は「ほくほくFG」の傘下であり、これで北陸地域もネットワークに入ることになる。また、福岡銀行と熊本銀行、親和銀行もふくおかFGの傘下にあり、グループ全体は収益では差はあるものの、預貸金では三井住友銀行に肉薄するボリュームとなり、メガバンクといえども無視できない存在となる。
今回の大手地銀9行による「地域再生・活性化ネットワーク」による提携は大手銀行のみならず、他の地銀トップに与えた衝撃は大きいものがある。
さて、これから金融再編の舞台を九州地域に移して考察していくことにしたい。
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