英語コンプレックスの強い日本人にとって「英語が話せる」という状態そのものが「憧れ」に近いが、海外や日本のビジネス最先鋭の現場に目を向けると、2カ国語は当たり前で、「3カ国語目が話せるかどうか」ということに目を向けられているようだ。
一因に、中華圏(中国や台湾)の経済成長や国際的認知度の上昇が挙げられる。中国では一党独裁、政情不安から「金があれば移民をしたい」と考える国民が少なくない。移民先は、カナダやアメリカ、オーストラリアといった英語圏だ。移民や留学で実際に英語圏に移り住むことは日常茶飯事で、帰国子女も多いことから「英語」が特別なものではない。日常生活や日常の交友関係の中に英語がありふれ、中上流階級の家庭ならば、自然に近い形で身についている。経済成長によって中華圏人材の海外進出が、語学力による優位性に拍車をかけた。韓国でも、中学・高校での徹底した「英語教育」により英語力の高い国民の数は日本の比ではない。
アジア圏でも語学を「勉強する」「勉強に手間取る」のはもはや英語ではなく「3カ国語目」である。日本語やスペイン語、ロシア語がそのターゲットとなる。日本語は「難しい言語」とされるが、日本に来る外国人がたどたどしい日本語を話すのを聞いて安堵感や優越感に浸ってはいけない。ほとんどの国際人材はすでに「母国語+英語」を話せる状態にあり、「3カ国語目」を学んでいる状態なだけ。以前、日本のあるパーティで、日本人社長が別の会社の台湾人支店長に対して「以前より日本語がうまくなりましたね」と見下すような口調で話していたが、もともとその台湾人支店長は「(母国語の)中国語」に加え、イギリス留学歴もある超エリート。「3カ国語目」の日本語の上達を、上から目線で褒められたことになる。
芸能界でも、日本ではバイリンガルで一目置かれるが、中華圏や韓国では「トライリンガル」が業界の最先端を行く。台湾出身の美人女優・林志玲さんは、以前、木村拓哉氏とドラマ共演し、「日本語」が話せることで話題になったが、彼女はカナダのトロント大学に留学歴があり「英語」を話す才女。また韓国のイ・ビョンホン氏は、米ハリウッドでも活躍し英語を話すが、大学時代は「フランス文学」を専攻している。
異国の環境で生活し続けるだけで「バイリンガル」達成は可能だが、「トライリンガル」は、さらに特別な才能と努力を要する。日本に赴任した海外からの外交官や会社幹部は、「日本語専攻者」もいるが、多くは母国ですでに「英語」で高得点を獲得している優秀者。日本赴任は「通過点」の場合もあり、日本語を流暢に話す人材は、母国語+英語を話せる「トライリンガル」の可能性がある。真の国際人材は「3カ国語」を話せる事がスタートラインなのかもしれない。
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